なぜ「ヤンキーの虎」は地方を支配できるのか 「伝統的エリート」では、地方を建て直せない

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さらに、「ヤンキーの虎」企業が若くて、意思決定が早い小集団であることも、優れたパフォーマンスをあげることができる要因です。ここにも日本の大企業が学ぶべき点があります。

日本の大企業病も「ヤンキーの虎」と比較するとわかる

 根本的に、企業経営とは一人またはごく少数のオーナーが取り仕切るもので、事業継続は一子相伝(子供一人だけに奥義を伝えること)です。コーポレートガバナンスというと一見聞こえはいいですが、これは、いわばオーナーの遺産を、血のつながっていない社員達が受け継ぎ、食うための仕組みのようなものです。もちろんそれ自体は悪いわけではありませんが、事業継承をするときには、「虎」的にリスクを果敢にとるような人を選び、その人に独裁的な地位を与えることが重要なのです。

ところが日本の場合、1代で経営してきたオーナー企業をサラリーマン集団にしていくのが事業継承だと思っている人が多いのです。ひとつひとつの意思決定をこまかく集団合意で決めるのが民主主義だと考えているので、結局創業経営者以外の人に経営を委ねることは難しくなっています。

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海外では違います。たとえば、米国は仕組みそのものが民主的なプロセスで「独裁者」を選ぶようになっています。大統領だってそうですよね。最大8年の任期という権力を与えられ、強いリーダーシップをとることができます。

その代わり、米国の有権者は長い選挙期間で人を見て、民主的なプロセスで「独裁者」を選びます。これが民主主義とリーダーシップを両立させる仕組みです。

企業経営も同様で、米国の経営者はパフォーマンスさえ出せば独占的な力を維持できるようになっています。もちろん、パフォーマンスさえ出せば何でも許されるわけではありません。しかし、米国以外でも、世界には鴻海精密工業(ホンハイ)の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長のような、意思決定の早い人たちがリーダーシップをとって戦っています。

こうした激しい競争の中で、意思決定が遅い集団合議制を取る日本企業がグローバルで勝てるわけがありません。私たちは、独裁者的なスタイルの経営者を民主的なプロセスで選ぶのがコーポレートガバナンスであるというふうに意識を変えなければいけません。

地方にいる「ヤンキーの虎」は存在さえ知られていないか、過小評価されているわけですが、実は地方だけの話だけではないのです。むしろサラリーマン化している都会の大企業こそ、学ばなければならない点がたくさんあるのです。                  (構成:渡辺 拓未)

藤野 英人 投資家。レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長CEO&CIO

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ふじの ひでと / Hideto Fujino

1966年富山県生まれ。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年に独立しレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。とくに中小企業株および成長株の運用経験が長い。「お金」や「投資」を通して、株式会社や日本社会、世界経済のあるべき姿を模索し続けている。教育にも注力しており、東京理科大学上席特任教示、叡啓大学客員教授、淑徳大学地域創生学部客員教授も務める。著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)ほか多数。

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