TDLを抜いたUSJ、いったい何を変えたのか 「ハリポタ」だけが来客増の理由ではない!

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変えた項目でいえば数百に上ります。ブランドの定義、導入するイベントやアトラクションの系統、TVCMの作り方、チケット価格……数え始めたらきりがありません。しかし変えたことそれぞれの根っこには、共通点があるのです。

それは「消費者視点(consumer driven)」という価値観と仕組みにUSJを変えたことです。テーマパーク業界は、その始まりから現在に至るまで、圧倒的にクリエーティブ中心の運営がなされています。簡単に言うと、クリエーティブが面白いと思うものをやってみて、当たれば大ヒット、外れれば大ピンチという経営です。巨額の資金をクリエーティブの才能に賭ける、いわば博打のようなビジネスモデル。これはテーマパークの母体である映画業界の仕組みを引きずっているからでしょう。

マーケティング部主導のプロジェクトに

これに対し新生USJでは、マーケティング部がエンターテイメント部や技術部が製作するアトラクションやイベントに対して、消費者目線の意見を取り入れる仕組みになりました。

USJの今の必勝パターンは、まずマーケティング部が消費者の望んでいるものが何かを分析し、何を作るべきかを決める。それからクリエーターやプロデューサーら作り手が必死にアイデアと技術を駆使して、どのように作るかを詰めていく。製作の途中段階でも、マーケティング部は当初の戦略の意図どおり作られているのか、消費者価値からズレていないかを随時確認する。

それによって、2010年以前は3割程度だった新プロジェクトの成功確率が、最近5年間の平均では97%と飛躍的に改善されました。USJは消費者視点を大切にして、作ったものを売る会社から、売れるものを作る会社に変わったのです。これこそがUSJ最大の変化です。究極的に変わったのはこのひとつだけ。消費者価値を高めるように全体が機能する会社になったのです。

消費者視点の組織になったことで、USJは「ハリウッド映画のテーマパーク」という狭いこだわりを捨てました。消費者が求めているのは「映画」かどうかではありません。最高に楽しいものであるかどうかが重要だという当たり前のことに気づいたのです。

「世界最高を、お届けしたい。」というブランドメッセージの下、USJはアニメやゲームなどのコンテンツも積極的に取り入れるようになりました。「ユニバーサル・クール・ジャパン」と銘打ったイベントでは、「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」など、世界に誇るべき日本のブランドをアトラクションに導入して熱狂的なファンを集めています。

これはテーマパークの閑散期とされてきた1、2月を強化することにもつながっています。アニメやゲームなどのコンテンツには一定数の熱狂的なファンがおり、季節に関係なく来場してくださるのです。

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