西友の“不正”で露呈、医薬品販売の危うさ 組織ぐるみは否定

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そもそも登録販売者制度は、09年の改正薬事法施行に伴いスタートした。高齢化が進んで医療費が膨張する中、厚労省は、自分自身で健康を管理しようという「セルフメディケーション」を推進。医療保険の対象とならない一般用医薬品の販売を促進すべく、薬剤師でないパート店員などでも医薬品を販売できる資格制度を新設した。

行政も業界も供給者の論理を前面に

小売業界側にも登録販売者導入のメリットは大きい。扱える医薬品は限られるものの、登録販売者なら薬剤師よりも1人当たりの人件費が安く済む。そのため24時間営業のコンビニなどでも医薬品を導入しやすくなり、さらにドラッグストアチェーンでは、店頭スタッフを薬剤師から登録販売者に積極的に切り替えていくケースさえ出始めている。

一般用医薬品市場はここ数年横ばい程度に推移しているものの、今後高齢化が進むと潜在市場は拡大していくとの期待が業界側にはある。ドラッグストアが出店攻勢を掛けているのに加え、最近ではGMSやスーパーのチェーンも医薬品カテゴリーの品目拡充に前のめりになっている現状がある。

副作用リスクの少ない一般用医薬品とはいえ、使い方を間違えれば消費者の健康や命に悪影響を与えかねない特別な商材だ。供給者側の論理に偏りがちな業界と行政の危うさは、決して今回の西友の“不正”だけに当てはまる問題ではない。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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