日銀総裁が漏らした不満 高まる期待と増す重圧 

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--今回、あえて「無制限」という言葉を使った理由は?

まずFRBの措置に対する誤解というか、認識から説明したい。FRBは9月のFOMCにおいて労働市場の見通しが改善するまでMBS(モーゲージ担保証券)の買い入れを継続することを決めた。この間、日本銀行は物価上昇率1%が見通せるようになるまで強力に金融緩和を推進していく方針を明確にしている。
望ましい経済や物価の姿を示しつつ、その実現に向けて必要と判断される政策を続けていくことを明らかにする点で、FRBと日銀の金融政策の運営の仕方は共通している。MBSは無制限の買い入れと理解されているが、正確には労働市場の見通しが改善するまでという条件が付いている。その点では日本銀行の運営と同じだと考えている。
日銀では消費者物価の上昇率1%を目指し、あらかじめ期限などを限定せずに新しい手法も駆使して強力に金融緩和を推進している点を改めて強調したい。
今回、「無制限」と申し上げたのは、金融機関が貸出意欲を増やすことを期待して、できるだけこの制度を活用してほしいという気持ちを込めた。

--成長基盤融資の導入時は異例の業務で長く続けるわけにはいかないと言われていた。貸出支援基金にそれを含めたことで位置づけが変わったのか。

成長基盤融資は14年3月という期限を設けている。今回の貸出増加支援の資金供給の期間をどうするかはこれから詰めていく。大きな貸出支援基金という枠の中で2つの枠がある。成長基盤強化の資金供給がなくなるわけではない。

--1%が見通せるまで貸出基金も供給を続けるのか。

中央銀行としてはかなり異例の措置だ。結果として同じになる可能性を否定しないが、基金の運営と時期を同じくすることをあらかじめ決めているものではない。基金と貸出支援基金はあくまで別のものとしてある期間行っていく。

--FRBのやっている緩和は俗にオープンエンドともいわれる。日銀の運営もそうした形と同じと考えてよいのか。

日銀は日本の国民に説明責任を有している。もちろん内外の市場参加者に対してもその責任がある。オープンエンドという概念自体も曖昧で、普通の国民から見てその言葉の意味はわかりにくいと思う。私としては日本語で正確に表現したい。消費者物価の前年比上昇率1%をめざして、あらかじめ期限などを限定せず、新しい手法を駆使して強力に金融緩和を推進する。
日銀は金融緩和政策のうえで常に世界の中央銀行の先頭を切ってきたという自負がある。もちろん、日本経済の厳しい状況に対応し、必要に応じて生まれてきたさまざまな政策だ。今、海外の多くの中央銀行が採用している政策の中で日銀が採用していなかったものがあるだろうか。ほとんどない。にもかかわらず、常にアメリカに照らして日本の政策を議論している。非常に何というか寂しい構図だ。

(井下 健悟=東洋経済オンライン)

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