大丸松坂屋、墓石まで売り捌く「外商」の凄み "お得意様"専用のサロンには何があるのか

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大丸松阪屋が外商の新規開拓に熱を上げる背景には、国内中間層の消費が期待できないことにある。百貨店各社に言えることだが、2016年2月期は30~40代を中心とした国内中間層の消費が鈍調で、同社の外商とインバウンド消費を除いた売上高は前期比で3.5%縮小した。

外商顧客向けのラウンジは、眺望も良く、とてもゆったりとしたスペース。写真撮影はNGだったが、見事な着物や年代物の時計なども並ぶ(撮影:尾形文繁)

これをカバーしようと、外商事業に大きな期待をかける。ただ、掛け売りの外商は、百貨店と客との信頼関係で成り立つ商売だ。選ばれし人しか外商顧客になることはできない。では、どういう人が選ばれるのか。多いのは、家が昔から代々外商顧客である場合だ。代替わりをしても1人の外商員が、その家を担当し続けることはよくある。そして、外商客から紹介を受けた場合。ただ、こうした従来の方法では、顧客の高齢化がまぬがれない。

製薬営業の後ろに並んで開業医にアプローチ

そこで大丸松坂屋が注力しているのが、外商員による飛び込み営業で新規客を開拓することだ。前述のように、同社は2013年に新規開拓部隊を結成。高齢化の進む既存客の若返りのため「ニューリッチ」と呼ばれる、起業などで財を成した40代前後の新富裕層を中心に狙いを定め、外商客数を増やしてきた。

方法は意外にも泥くさい。高級住宅街を調査するのに加えて、マンション住まいでアプローチできない人へは、職場に営業をかける場合もある。外商員として開拓部隊での経験があるお得意様営業企画部の則竹雄太氏によれば、「開業医の休憩時間などにアポを取り、製薬会社の営業員の後ろに並んでアプローチすることもあった」。

最も売上高が多いのは、名古屋店と心斎橋店(大阪)の周辺だ。この2地域で、全体の外商売上高の4割弱を占める。関東では、東京都の港区と世田谷区。そして最近では、札幌の円山公園周辺や伏見のあたりの新興住宅街が狙い目なのだという。

取り扱う主な商品は、絵画や宝飾品、ハイブランドの衣料品など。加えて、旅行のツアーや、なんと墓石まで斡旋する。「うちの百貨店では取り扱っておりません、ということが出来るだけ少なくなるよう、客の要望に応じて品ぞろえを広げている」(お得意様営業企画部の服部剛士氏)。

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