酒が一気に美味くなる!大阪発の「魔法の器」 エジプト時代からある「あの金属」がカギ

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右が大阪錫器で一番人気のシルキータンブラー。現在、筆者は左のクレールタンブラーで毎日晩酌を楽しんでいる

というわけで、筆者も早速、タンブラーを入手し、水を始め、ビール、日本酒、焼酎、ワインなどいろいろな酒を注ぎ、グラスで飲む場合と比較してみた。「そんなに大きく味わいが変わるものか?」と半信半疑だったが、うわさどおり明らかに飲み物のカドがとれて驚いた。ウマい酒がさらに飲みやすくなるのはもちろん、アルコール臭が気になるような安価な酒も雑味が飛んで丸みを帯び、お値段以上と感じさせる味わいとなるのだ。

また、錫は熱伝導率が高いため、特に冷酒や燗に向いている。真夏にキンキンに冷えたビールを注いで飲んだら格別だろう。ただ、高温のものは持てなくなるほど熱くなるので、熱燗やお湯割りが好きな人は、素手で持てるよう籐が巻いてある商品もあるのでそちらがオススメかもしれない。夫が「この重み、高級感があっていいよね」とニンマリしていたが、ほどよい重量感も心地良い。

エジプト時代から活用されてきた金属

この錫独特のマイルド効果には、学術的な裏付けはないらしい。だが、紀元前1500年もの昔、エジプト王朝の古代都市遺跡から錫の水壺が発見されており、活躍の歴史は古い。中国でも水をキレイにするため井戸に錫板を沈めていたなど、「水が腐らない」といった類のエピソードは昔から各地にあるそうだ。

日本には約1300年前に遣隋使や遣唐使によって入ってきたそうで、奈良の正倉院宝物には、錫製の薬壺が数点保存されているという。科学的根拠がないものの、古くから世界中で活用実績がある不思議な金属なのだ。

そして、ちょっぴり繊細でもある。レモン水など酸が強いものは変色したり、コーヒー用に使っていると色を吸着する可能性があるようだ。融点が低くやわらかい金属であるため、落とすとへこむケースも。その他、食洗機や電子レンジ、冷凍庫での使用は不可。普段の手入れは中性洗剤で普通に洗うだけでよいが、水滴跡を防ぐためには水気をきることが大切で、特に使い始めて10回ほどはしっかり水気をふき取るといいそうだ。

しかし、過度に神経質になる必要はないと筆者は感じる。夫が使い始めの頃に飲み物を入れたまま一晩放置したり、水気をふきとり忘れたこともあるが、美しい外観は2カ月経った今も健在だからだ。そもそも高級感があり、自然と大切に扱うのでトラブルは起きにくいだろう。鈴木社長も、3年に渡る錫との付き合いについてこう語る。「愛車と一緒で、水気をふき取る手間も楽しい。少し黒ずんできたのも、エイジングみたいでいい感じ。落としてしまったこともありますが、割れることなく丈夫ですよ」。

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