改正パート法で何が変わる? 理想と現実に落差 抜け穴探しも横行

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 法改正の抜け穴を探すような企業の動きが出てきているのも事実だ。ある中小企業は、3月末でパートの仕事内容を大幅に見直した。正社員との職務内容をあえて“差別化”することで、パートの待遇を据え置くことを狙ったのだ。一方、ある地方の物流会社では、3月末でパートを解雇し、業務請負業者との契約に切り替えた。正社員を目指していたパートには、業務請負先を転職先として紹介したという。「正社員へ転換するための措置も義務化されたが、採用するかの選択権は企業にある。頑張っても、正社員になれる保証はない」と前出の鴨会長は懸念する。

人手不足でパートの正社員化進める企業も

ただ、現実問題として労働力不足は一部で切実な問題となっており、パートを正社員に登用して、戦力強化に動く企業は増えている。

「ユニクロ」のファーストリテイリングは昨年4月に「地域限定正社員制度」を導入した。同社は店舗運営中心で従業員に占めるパート比率が8割と高い。が、定着率は伸び悩み、採用・研修コストが負担となっていた。正社員登用のキャリアプランもあったが、「転勤したくない」と躊躇するパートも少なくなかった。そこで、転勤のない制度を新設、3月末までに2046人が地域限定社員の道を選んだ。会社側は来春までに5000人ほどの採用を見込んでいる。

また、食品スーパーの東急ストアでも、2年前からパートの正社員化を進めている。100人の応募に対しすでに50人を採用しており、今後も積極化するという。1人当たりの人件費は最大100万円増えることになるが「年間2500人のパートが辞める中、求人募集しても集まらない。定着してくれるなら1人100万円増でも安い」(小野道久取締役)という。今後は、週25時間などの短時間労働者も対象に加える考えだ。こうした例は、大手金融機関にも広がりつつある。

人事管理に詳しい東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授は「改正パート法の施行を機に、企業は正社員を含む雇用や処遇の仕組み全体について見直す必要がある」と指摘する。短期的には抜け穴探しに走る企業が出たとしても、中長期的には、改正パート法の狙いどおり、企業側は多様な働き方を受け入れざるをえなくなるのではないだろうか。

(前田佳子、許斐健太 =週刊東洋経済)

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