子供たちに大災害をどう伝えたらいいのか 参考になる米ダギーセンターでの取り組み

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“子供の反応はその時々で変化する”

子供の反応はさまざまだ。無関心であったかと思えば悪夢を見る、食が進まない、不安になるなど縦横無尽に変化する。それはまた年齢や、過去の死別体験や喪失体験、あるいは性格によっても異なる。臆病で神経質な子供は不安感でいっぱいになり、もの静かな子供は感情を押し殺す。また直接的に家族の死を経験したり、惨事を目撃したり、友人の死に遭遇した子供たちの反応やニーズは長期化することもある。子供たちの行動変化や傾向に注意を払おう。不安の高まりや眠れないことは自然な反応ではあるが、もし気になる行動や症状があれば専門家に相談しよう。

信頼関係がレジリエンス(回復力)を支える

“多くの子供は恐怖心の高まりを感じる”

特に自然災害が発生したあと、子供たちは大人に質問したいことがたくさん出て来るかもしれない。その時は、発達段階に応じたわかる言葉で答えてあげよう。すべての質問に答えられなくても大丈夫。調べて後で答えることを伝えよう。「そのことについて、あなたはどう思う?」と聞いてもいい。子供たちは起こっていることに対する思いや考えを大人に受け止めてもらいたいし、報道で伝えられる災害が自分の街でも起こるのではないかとの恐怖心にかられている。

自分たちの住む地域の防災計画や避難計画について話し合っておくことは有効だ。また、何か起きた時のための具体的な行動、たとえば家族の集合場所を決めておく、各部屋に懐中電灯を用意しておく、あるいは非常用の水や食料の場所について話しておくことも安心につながる。

“子供たちは真実を知りたいし、知る必要がある。そうした存在に値する”

30年以上にわたり数千名の子供たちをサポートしてきた中で、「うそをついてくれて良かった」と言う子供は一人としていない。しかしうそをついた両親やほかの大人に怒りを感じたり、不信感を抱く子供はたくさんいる。大人が真実を話さずにいると、子供は大人を信じられなくなる。悲惨な出来事や喪失についてオープンに、正直に話ができることは信頼関係を生み出し、不安や恐怖について安心して口に出せるようになり、レジリエンス(回復力)を持ち得るのだ。

以上、参考になっただろうか。ドナ・シャーマンさんは子供のレジリエンスの要因について、著書『Never the Same』の中でも「子供がもともと持っている気質」「親密な人間関係の中での愛情」「外部サポートシステム」を挙げている。

特に、現在の九州においてこれから必要となるのが、外部環境におけるサポートだ。多くの時間を過ごす学校や所属感を得ることのできるグループ、地域社会活動とのかかわりを通じて、先生や地域の大人たち、相談員が温かく見守り支える中で、子供たちは生きる力や自信を取り戻していくはずだ。

筧 智子 公認心理師

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かけひ ともこ / Tomoko Kakehi

ストレス診断・出張カウンセリング・メンタルヘルス研修・人事や管理者へのコンサルテーション・復職支援プログラムなどを手掛けるEAP(従業員支援プログラム)プロバイダーに勤務。また心療内科での心理職としても活動。上智大学大学院の博士後期課程に在学中でもある。

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