日本人シェフ、なぜ今フランスで人気なのか 新たな食のムーブメントを日本人が牽引

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川村によると、その基本的な違いは、日本人シェフの間でも完全には失われていない。「フランスで活躍する日本人の若手シェフたちは、いつも言っている。自分たちはフランス料理のテクニックを使っているけれど、作っているのは自分の料理だと」。

フランス料理と日本料理の交錯

こうしたフランス料理と日本料理の交錯をよく感じられるのが、「Dersou(デルス)」だろう。バスティーユ広場の近くにあるこの店は、天井が高く、むき出しの壁がロフトのような雰囲気をかもし出している。この店の特徴は、料理とカクテル。95ユーロのテースティングコースは、5つの料理と5つのカクテルがペアになっている。

デルスのシェフ、関根宅氏

シェフの関根宅(35)は、東京の「アラン・デュカス」で働き、パリでは「クラウンバー」で修行。彼が最初に出してくれたスープは、和風の椀によそわれていて、懐石料理を食べにきた気分になる。でも一口飲むと、野菜ブイヨンとプレフェルミエ、焦がしバターの味が口の中に広がる。まぎれもなくフランスの味だ。

関根氏が作るスープは見た目は和風だが、まぎれもなくフランス料理だ

関根をはじめパリで働く日本人シェフの多くは、同じ店で働いた経験があり、今も仕事が終わった後、同じバーに集まる。パリのほとんどのレストランが閉まっている日曜日の夜は、「クラウンバー」に集まることが多い。

それはエレガントだがキッチュな店の雰囲気と、面白い発見のあるワインリストが好きだから。そして白身魚のホワイトアスパラガス添えや、小鳩のロースト、リードボーなど、徹底的にフランス的な料理をこよなく愛しているから。彼らがフランスに来た理由と同じだ。

(執筆:Oliver Strand記者、翻訳:藤原朝子)

(写真:Damien Lafargue/The New York Times)

© 2016 New York Times News Service
 

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