日本人シェフ、なぜ今フランスで人気なのか 新たな食のムーブメントを日本人が牽引

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そんなフランス人も、日本人シェフの作る料理にすっかり魅了されているようだ。渥美や沖山は、フランス人シェフたちと同じように、フランスの伝統を守っている存在だ。

沖山氏によるアップルミルフィーユ

「重要なのは才能と情熱、そして魂だ」と、カマスは言う。技術だけでは、パリでできることには限界があるという。「アブリのミルフィーユは、パリで最高の一つだ」。沖山のミルフィーユは遊び心があふれ、クラシックなミルフィーユとは違う。だが、一口食べると、その味は伝統に忠実で、フュージョンとのたわむれはない。「沖山は伝統料理をさらにおいしくする」と、カマスは絶賛する。

日本人ならではの素材へのこだわり

フランス料理と日本料理は、昔から互いに敬意を払ってきた。どちらも洗練され、極めて体系化されており、中世のように厳しい師弟関係を通じて優れたテクニックが伝えられてきた。

日本には極上のフランス料理店もある。今年ミシュランで3つ星をとった東京のレストラン13軒のうち、11軒は日本料理店で、2軒はフランス料理店だ。こうした店が出す料理が、若い料理人たちのイマジネーションに火を付けてきた。

フランスで活躍する日本人シェフの多くが素材にこだわるのも、そのあたりに理由がありそうだ。それに子羊、バター、シャントレルなど、日本では手に入りにくい素材が、パリでは近所の市場で簡単に見つかる。

「食材店に行くと、フランス人が買っているものを観察する」と、沖山は言う。「フェンネルとかね。個人的にはフェンネルは好きじゃないけど、フェンネルを理解しようと努力してる。そこからどんな味を引き出せるか、それを使って何ができるかを考えている」

パリ在住のジャーナリスト川村明子は、「フランス料理は足し算の料理、日本料理は引き算の料理と言われる」と語る。フランス料理では、高級なほど凝っていて、味付けやソースが重要になる。他方、日本料理は、高級なほど装飾を避け、さりげない細やかさが重要になる。

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