ソフトバンク 孫正義 世界一への野望 売上高で世界第3位へ

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赤字3兄弟のターンアラウンド

低迷する会社を別会社のように立ち直らせるソフトバンクの魔術。その源泉は営業力にある。

「うちは営業の会社だから」

孫社長の右腕的存在である、宮内謙・ソフトバンクモバイル副社長の口癖だ。ボーダフォン買収時にも、宮内副社長は一堂に会した社員に対し、「これからこの会社は通信キャリアではなく、営業販売会社になります」と宣言した。インフラ屋としての自負が強い社員はショックを受け、大量の人員が辞めていったという。「家電量販店相手にゲームソフトの卸をしていた時代からの営業マンが、グループ内で幹部クラスまで上り詰めているケースも多い」(元幹部)。創業当時のDNAは今も変わらない。

ソフトバンクの11年度研究開発費はわずか9億円弱。NTTドコモの1085億円、KDDIの328億円と比べると、同じインフラ業とは思えない。

10年12月には、経営破綻したPHS専業、ウィルコムを完全子会社化。10四半期連続で契約者流出が続いていたうえ、通信の高速化競争にも取り残された問題会社で、当初は引き取り手が見つからなかった。だが、ソフトバンクは宮内氏を社長として送り込み、他社も含むすべての携帯・固定電話への通話が無料となる「だれとでも定額」を開始(1回当たり10分以内の場合)。たちまち契約者純増を回復した。

日本テレコム、ボーダフォン、ウィルコムの再建に成功した孫社長。15日の会見でも、「“赤字3兄弟”がすべてV字回復した。これはもうノウハウだ。ソフトバンクの企業カルチャーだ」と胸を張った。

今回のスプリント買収に関しても、孫社長は磨き上げてきた営業・マーケティング手法を武器に立て直す自信を見せる。ただ、舞台は日本ではなく米国。文化や商習慣も違えば、運命共同体となってソフトバンクを支えてきた光通信やテレコムサービスなどの販売代理店も存在しない。孫社長は新たな大勝負に、打って出る。

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