iPhoneSEが「低価格化」で狙う果実とは何か その答えは中国市場にあった

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iPhoneの普及は、アップルが提供するApple Music、iTunes Store、iBooksなどのコンテンツ販売サービスからの収益向上も見込める。ロイターによると、中国政府の要請によりiTunes MovieとiBooksの配信が停止に追い込まれているが、アップルが中国市場で仕掛けた収益向上策はこれでとん挫したわけではない。ほかにも手を打っている。

アップルが中国市場で大きな期待を寄せているのは、日本市場にはまだ投入していない非接触決済サービスのApple Payだ。

iPhone SEはApple Payに対応しており、中国国内、そして中国から米国へ旅行するiPhoneユーザーの決済から、アップルは手数料収入を得られるようになった。

狙いは中国市場の巨大な「手数料」

iPhone SEはApple Payに対応する。このデバイスの主戦場とも言える中国市場でも、すでにサービスを開始している決済サービスだ

アップルはiPhone SEによって、米国に次ぐ経済規模かつ、莫大な消費人口を抱える中国市場から、アプリ課金の手数料に加えモバイル決済からの手数料収入を得られるようになる。

アップルはハードウエアの製造と販売を主なビジネスとする企業だ。現在は、特にiPhoneにその収益の6割以上を頼っている。iPhone偏重の傾向は、人々が何らかの事情でスマホを使わなくなるまでは今後も変わらないだろう。

アップルにとって、スマホの次を担うハードウエアを生み出すことも重要だが、まずはスマホ周辺のサービスから多彩な収益を作ることが重要だ。Apple Payを中国市場に持ち込んだiPhone SEにはそんなチャレンジが込められているのだ。

もちろん、手数料で稼ぐビジネスモデルのターゲットは、中国市場だけではない。日本を含む世界の主要な市場で「手数料」の重要性は高まっていくだろう。あえて価格を安く抑えたiPhone SEには、人々を性能で魅了するハイエンドモデルとは違う、別の複雑な思惑が込められているのである。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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