VW訴訟は「見えざる手」がスピード解決した

元FBI長官の頼みには、誰も逆らえない

米国排ガス訴訟でスピード合意にこぎつけた独VWのロゴ、ジュネーブで3月撮影(写真: ロイター/Denis Balibouse)

ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が米国での排ガス不正問題の解決に向けた原則合意に達した。サンフランシスコ連邦地裁のチャールズ・ブレイヤー判事が21日午前、法廷で正式に発表した。この合意は、司法省や連邦取引委員会(FTC)を含めた米連邦政府とカリフォルニア州当局、VWのクリーンディーゼルカー所有者との間でなされた。

合意によれば、所有者の大半は、車をVWに買い取ってもらうか、米国排出基準に合うよう修理してもらうか選択できる。合意のすべての詳細は6月に明らかにされる見込みだ。

被害が無秩序に広がった訴訟としては、信じられないほどのスピード解決だった。VW弁護団長を務めるロバート・ジアフラー氏は21日の会見で、原告が異なる複数の裁判を行う広域係属訴訟が、こんなに早く和解に至った例は見たことがないと述べた。筆者とてそうだ。ブレイヤー判事が裁判を担当することになったのは昨年12月半ばで、訴訟がまとめられたのは2月半ばだった。その2カ月後に和解に至ったのだ。

その目まぐるしい早さはある程度、ブレイヤー判事によって仕組まれた。排ガス規制をごまかした車を修理するか、廃車にする代わりに顧客に弁償するかして欲しいと、同判事はVWに明言。当事者すべてに「意欲的な審理の期限」を明示していた。ジアフラー弁護士は膨大な労力を費やし、顧客側の弁護士も休日返上で業務に当たった、と語った。

仲介役で驚くべき人選

ただ、スピード解決を導いた見えざる手もあった。それは米連邦捜査局のロバート・ミュラー元長官が差し出した。同氏は現在、法律事務所ウィルマー・カトラー・ピカリング・ヘール&ドアのパートナーを務めている。

1月にブレイヤー判事がミュラー氏を特別な仲介役に指名したのは、驚くべき人選だった。ミュラー氏はサイバーセキュリティや危機管理の専門家でホワイトカラーの弁護を手がけているが、個人顧客を相手にすることで知られていたからだ。

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