KDDI電磁波裁判、退けられた住民の訴え 「健康被害」の存在は認定

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 弁護団長の德田靖之弁護士は、水俣病などの環境公害では歴史的に科学的な因果関係が証明されないことを理由に、企業側に制裁が下されず健康被害が拡大した経緯があることから、今回の件に危機感を抱いている。「携帯電話会社の責任が認められれば日本のみならず世界中の携帯電話基地局に影響が波及する。裁判長はその影響力の大きさに怯え、基地局との因果関係を否定したのだろう。しかし、今回の判決が間違いだったということはいずれ明らかになる」。

KDDI側は判決に対し「弊社の基地局は国が定めた電波防護基準値を遵守し運営している。適切かつ妥当な司法判断が下されたものと受け止めている」とコメントした。


棄却という結果に固い表情をみせる原告団

問題となっている基地局

「健康被害」の存在は認定

この裁判の最大の争点は「健康被害が認められるか否か」、また「健康被害が基地局に起因するものか」という点。太田敬司裁判長は原告が訴えていた不眠、慢性的な頭痛、耳鳴りの症状に対して「これらの愁訴が虚偽であるとは考えられない。原告らには、各々が述べるとおりの症状が発生していることが認められる」、「その発症の時期は本件基地局設置後であると認められる」として健康被害を認定。これまでの訴訟事例から一歩踏み出した内容となった。

しかし、「直ちにそれが電磁波による健康被害と認定することはできない」と述べ、基地局と健康被害の因果関係は否定。世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)も2011年に「発がん可能性がある」とリスク評価しており、携帯電話や基地局から発せられる電磁波で健康影響が起こりえるという疫学調査や研究論文が世界各地で発表されているが「客観性に対する批判や、異なる結論の研究・報告も存在する」と結論づけた。

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