「グランドビッグマック」はなぜヒットしたか SNSでの拡散に成功した理由を探る

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その観点からグランドビッグマックを語るうえで大きなポイントはフォトジェニック、つまり「写真映え」だ。Twitterに代表される文字による「つぶやき」よりも、フェイスブックやインスタグラムのような「画像」の投稿は一目でわかるインパクトがある。事実、SNS上で話題になっているような外食店はこの戦略がしっかり対策されている。「かわいい」「おしゃれ」「インパクトがある」といったフォトジェニックであることを条件に新メニューを開発するなど、写真映えするかどうかは、不可欠になっている。

インパクトのある大きさがSNSへの投稿を促進

グランドビッグマックは、一般的に「大きい」という認識があるビッグマックよりもさらに大きいというインパクトが、SNSへの投稿を促進することに成功しているのだろう。グランドビッグマック単品はもちろん、Mサイズの1.7倍となるグランドポテトと、Mサイズの2倍のグランドコークのセットにもインパクトがある。

これがスマホから次々とSNSへ投稿されているのだ。何かと比較して大きさを伝えようとするなど、まさに写真を撮りたくなるビジュアルに仕上がったことがヒットした要因のひとつと考えられる。インスタグラムでも2000件を超える投稿がみられる。販売制限がかかるほどの人気になったことがネットニュースでも取り上げられ、消費者の間でそれが循環するという構図にもなった。

マクドナルドは2014年以降も、ユーザー参加型のキャンペーン、たとえばおてごろマック発売時には、3つのバーガーの愛称と名前がだいたい同じ人に無料お試しキャンペーンを開催するなど、SNSを意識したプロモーションは行ってきている。

ただ、これまでのマクドナルドが投入した新商品は、フォトジェニックさを意識していなかった。SNSで話題になることも、むしろつぶやきによるクチコミ拡散を図っていたのかもしれない。たとえば2016年2月に発売された「名前募集バーガー」。名前という部分にフォーカスしていたが、ビジュアルに関してはまったく触れていなかった。名前募集に500万件を超える応募があったことから話題になったが、グランドビッグマックほどのインパクトは残せなかったのではないか。

マクドナルドは4月27日から期間限定の新商品「クラブハウスバーガー」(単品490円)を投入する。購入者向けのキャンペーンを実施し、Twitterとも連動していくようだが、具材やバンズに特徴が見られるものの単純な大きさなど、わかりやすいフォトジェニックな要素はあまり感じない。

もちろん、フォトジェニックな商品を展開することだけでマクドナルドが以前のような勢いを取り戻せるわけではなく、消費者の信頼を少しずつでも回復させていくことが最も重要だ。ただ、このようなマーケティング戦略により、再び消費者の足をマクドナルドへ向かせ続けることが可能になれば、マクドナルドブランドの再浮上につながっていくかもしれない。

三上 成文 フードアナリスト・ブランディングプランナー

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みかみ しげふみ / Mikami Shigefumi
外食大手企業での現場経験を経て、広告代理店にて広告営業を経験。2009年、当時のクライアントであった外食ベンチャーにて、ブランディング/PRに携わり、自社PRだけでなく、地方自治体や他社との業務提携PRを担当。2014年12月より、海外人気店の日本展開PRに携わる。

 

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