ガストが焼肉、しゃぶしゃぶ店に変わる理由 すかいらーく谷社長に戦略を聞いた

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ガストは今後、焼き肉やしゃぶしゃぶ、カフェなどの専門業態に置き換わるケースが増えそうだ
2006年にMBOで上場廃止したファミリーレストラン大手のすかいらーく。2011年に株主となった投資ファンド、ベインキャピタル傘下で再建を果たし、2014年に再上場にこぎ着けた。既存店売上高は10四半期連続で前年同期超えするなど好調で、2015年12月期は最高益を達成した。
だが、国内外食市場の変化は激しい。現在好調が続くガストも、さらなる攻勢に向けてさまざまな実験・改良を重ねている。2008年の就任以来、ベインと二人三脚で経営再建に取り組んできた谷真社長に、今後の戦略を聞いた。

 

――前期は過去最高の決算だった。

MBO後、赤字店の閉店など負の遺産を払拭した時期が企業再生の第一フェーズ。第二フェーズはアベノミクスがスタートした2013~2015年だ。この3年間は、高単価の商品を提案することで既存店を伸ばし、過去最高益につながった。

――MBO当初は苦しい時期が続いた。

3年間で700店以上の過剰出店をしたことが響き、2006年にMBOを実施している。その後も2年間は業績が悪化し続けた。今思い出してもつらいが、2008年に社長に就任して最初にやったことは、社員の給料を大幅に下げたこと。300数十店を閉店するという厳しい時期も経て、2011年に筆頭株主が野村プリンシパルファイナンスからベインに移った。これが会社再生の第1期だ。

会社再生の時代を「今思い出してもつらい」と振り返った谷社長

ベインは成長を戦略の柱に据えた株主だ。ベイン傘下での再生は、会社の弱点や強みを明確にすることから始まった。

生え抜き幹部やベテラン社員にヒアリングすると、出店が唯一の成長戦略と考えていることがわかった。既存店を成長させる確固たるノウハウを持っていなかった。だが、外部から人材を招聘したことで、中間幹部が鍛えられ、彼らが、現在の既存店の成長を支えている。

ベインとの関係はどう変わる?

――44%の株を保有しているベインの出資比率が低下するなどして影響力が薄まっても、ノウハウを受け継ぐ人材はいるのか。

再生のために外部から招聘した人材は、執行役員クラス(=MD)だけでもこの2年間で4人去ったが、まったく心配ない。もともとベインは経営戦略を提案するわけではなく、長所を伸ばす考え方だ。差別化の源泉は何かということを解き明かし、それを着々とこなしていく。

そういう意味では、とっくに基盤はできていて、中堅幹部が非常に強くなっている。私としては、外部から来たMD(マネージングディレクター)が全員いなくなっても、部長さえ残ればいいという感じだ。

――2015年6月にベインが一部株式を売却した。投資家は、いつ売るのだろうかと懸念を持っているのでは。

業績そのものでいえば、もっと株価が高くてもおかしくはない。それ(ベインが株式を放出する可能性)が重しになっていることはあるだろう。かといって、ベインが早急に無理矢理株を売って出て行くことはない。当社の成長を一番信じているのはベインとわれわれの社員だ。

少子高齢化や地方の疲弊を背景に、国内で成長は難しいと考える人たちの理解が進まなければ、当面、株価は上がらないかもしれない。

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