米国産ガスの対日輸出には限界 米国シェール革命と日本《1》

拡大
縮小

 


--今後、中長期的な日米欧の天然ガス価格の見通しは。

 

米国ではシェールガスの生産本格化や石炭との競合で大きく上がる状況ではないが、中長期的には若干上がる方向とみられる。生産拡大とともに、採掘が難しくなるガス田が増え、コスト的に上昇する。2035年には7ドルくらいになるのではないか。

欧州では、価格体系が原油リンクから離れて、天然ガス自体の需給ベースへ変わっていく可能性がある。ロシア、北アフリカ、欧州域内と供給源が多様化しているため、売り手への圧力をかけやすいためだ。ただ、北海のガス資源が枯渇傾向にあるため、長期的には緩やかながらも上昇傾向とみられる。2035年には12~13ドル程度か。

日本は原油価格リンクが当面適用されたままと思われ、現状のように相対的に高い価格が長期的にも継続しそうだ。ただし、米国でのシェールオイル増産によって、米国の原油輸入が減り、世界的な石油需給は緩む。原油価格が下がれば天然ガス価格も下がる可能性がある。

--日本のエネルギー政策として今なすべきことは。

即効性のあるものはあまりない。生産拠点や供給基盤の整備には何年もの時間がかかり、すぐには転換が難しい。

中長期的なエネルギーの安全保障で最も重要なのは、多様化である。1つ目はエネルギー源の多様化。2つ目に単一エネルギー源における供給元の多様化。3つ目は、供給量自体を抑えるという意味での省エネや燃費の向上。どれに偏っても柔軟性を失う。これらを組み合わせて能動的に動いていく必要がある。中国など新興国へ技術を移転することでエネルギー効率を改善し、CO2削減を果たして、(原油価格低下などの)利点を日本も享受していくことができる。

最近、秋田でシェールオイル採取の話があったが、そうした例を通じ技術開発を行っていくことで、海外での開発に活用し、日本に資源を持ち込むこともできるだろう。

--JOGMECが東海沖で試掘作業をしている新型天然ガス「メタンハイドレート」の将来性は。一説には日本の消費量の100年分の埋蔵量ともいわれます。

モノになればいいが、今は判断できず、そのための調査をしている段階。2018年に商業生産に行くかどうかの最終判断を行う予定にある。

ただ、日本には資源がないので、可能性があるものを調査していく姿勢は重要ではないか。そうした努力なしに、高いエネルギーを買い続けるのはエネルギー安全保障上、得策とはいえない。資源が存在する地下のリスクだけではなく、政治面など地上のリスクをいかに乗り越えていくかが重要だ。

(聞き手:中村 稔 撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)

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