目前の五輪を見送る、「一流」佐藤悠基の戦略 期待のエリートランナーの「勝負観」

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「ベルリンはマラソン練習として、最低限の距離だけを押さえていったらどうなるのか。そういう試みでした。レースに向けた実践的なトレーニングはほとんどしていません。過去2回の東京はキロ3分ペースで突っ込んでいくレースをしているので、(前半はペースを抑える)ネガティブスプリットで、終盤に上げるレースをやってみたかったんです。2時間10分台でゴールできればいいなと思っていました」

佐藤は中間点を65分で通過する予定の第3グループでレースを進めて、40kmまではほぼ予定どおりだった。しかし、ラスト2kmでペースアップしようとした瞬間に左ふくらはぎを負傷(軽い肉離れ)。ゴールまでは歩くようなペースになったものの、狙いどおりのレースはできたという。

「ふくらはぎを痛めなければ、2時間10分台でゴールできたと思うので、課題にしていたところは、できそうかなという手ごたえをつかむことができました。過去2回のマラソンと違い、30km以降も自分の意志でカラダを動かすことができましたからね」

3度のマラソンを経て、佐藤はいよいよ「結果を求める」レースを迎えることになる。4月24日(日)に行われるロンドンマラソンに参戦するのだ。

ロンドンのターゲットタイムは「2時間8分」

佐藤は1~3月までに宮古島、奄美大島、宮崎、千葉で合宿を行い、4度目のマラソンに向けてトレーニングを積んできた。今回はベルリンのときと同じぐらいの距離を走り込んだだけでなく、実践的なスピードトレーニングもこなしており、「ベルリンよりワンランク上がっている」という感触をつかんでいる。

佐藤が出場するロンドンは世界最高峰のメジャーレース。今回は2時間2分57秒の世界記録を保持するデニス・キメットをはじめ、2時間6分未満の自己ベストを持つスピードランナーが8人参戦する。その全員がケニアとエチオピアの選手たちだ。

トップ集団は世界記録を狙えるペースで進むことになりそうで、第2集団、第3集団のペースは直前に決定する。佐藤は大会サイドに「中間点を63分30秒で通過したい」という希望を伝えており、ターゲットタイムを「2時間8分」に置いている。

「ロンドンを2時間8分前後で走れたら、次のレ―スで日本記録(2時間6分16秒)を狙いにいきますよ。キロ3分を切るペースで押していければいいので、自分の武器であるトラックで培ったスピードを生かせると思います。マラソンは速さを競うスポーツなので、僕はタイムを意識したい。まずは日本記録がひとつの目標です。そこをクリアしないと、世界と戦うと言っても話にならないですからね。そして、4年後の東京五輪ではしっかりと勝負したい。そこにピークを合わせられるように逆算して、取り組んでいます。自分の現状を把握して、自分の持っている力をしっかり出すために、何をすべきなのか。それはスポーツだけでなく、ビジネスも同じだと思います」

自分にとっての「ゴール」はどこなのか。周囲に惑わされことなく、自分の道を突き進むことが、「目標達成」への最短コースになるだろう。

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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