売り抜けたと言われるのは不愉快だ 千本倖生 イー・アクセス会長

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--普通のベンチャーならそうですが、免許制で国民の財産である電波を割り当てられてビジネスをしている会社にその考えを当てはめるのは適切ではないように思います。

それは非常に日本的な古臭い考え方。米国でも先日、通信大手TモバイルUSAがメトロPCSとの合併を発表している。免許を持っていても資本主義の論理で会社が買収されることはありうるし、何ら否定されることではないと思っている。

--イー・アクセスが持つ1.7ギガヘルツ帯の電波がLTEの国際標準として注目されるようになり、6月にはプラチナバンドの700ギガヘルツ帯も獲得したばかり。それから3カ月での統合発表は、会社の価値を上げて売り抜けたようにも見えます。

売り抜けるといった見方は間違いで、非常に不愉快だ。もちろん、そうした目的で700ギガヘルツ帯を獲得したわけではない。これまで身売りしようと思ってもいなかったし、他社からの提案もなかった。今回は、あくまでソフトバンクとのシナジーによって、会社がより発展できると判断したからだ。

--買収で業界のプレーヤーは4社から3社に減ります。価格競争の先陣を切ってきたイー・アクセスが買収されることで、競争がなくなってしまうのでは?

買収が決まってからそんなことを言う(笑)。スマートフォンやLTEもそうだが、この業界の商品や技術は、革命的に変化していく。今後も新しい商品や技術が生まれ、それを機に新規参入が増える可能性はある。電波オークション制度が導入されれば、他業種からの参入も考えられる。一時的に4社から3社に減っても、競争が弱まることはないだろう。

ソフトバンクグループに入っても、イー・アクセスは存続し、イー・モバイルのブランドも残る。取締役5人のうち2人をソフトバンクから迎える予定だが、私もエリック(・ガン社長)も当面は取締役を続ける。これまで掲げてきた「安くて速い」、「消費者に喜んでもらう」スタンスは維持していくつもりだ。たとえば、アイフォーン5をイー・アクセスが販売し、逆にLTEのWi−Fiルーターををソフトバンクが販売するなど、販売チャネルの相互乗り入れを進めていけば、業界の競争は加速するだろう。

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(聞き手:田邉佳介、麻田真衣 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2012年10月20日号)


せんもと・さちお
1966年京都大学卒業後、日本電信電話公社入社。84年第二電電設立に参画。99年イー・アクセス創業。 

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