Jフロントはパルコとのシナジー追求とスーパーのピーコックの建て直しを推進

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一方、子会社化したパルコについては、シナジー効果を極大化するため、三つの施策を進めている。一つ目は、店舗の共同開発。「両社のノウハウを利用し合って、新しい店舗の共同開発が出来ないか。両社の所有している不動産をどうやって利用・再開発していくか。これが一番のポイント」だ。現状では、松阪屋の上野店の南側部分の再開発が間もなく始まるが、すでに共同の取り組みが行われている。今後は、周辺に不動産を所有する大阪・心斎橋店でも再開発プロジェクトが浮上する見込みで、こちらでも同様の取り組みが予想される。

二点目は、パルコのSC運営ノウハウの取り込み。「パルコの優れた部分は、有望テナントの発掘と育成と少人数運営による管理能力。これは百貨店のショップ運営に関しても非常に勉強になる」。Jフロントはマーケット対応力の強化とローコストオペレーションへの構造転換の実現に向け、「新百貨店モデル」の構築を進めている。新百貨店モデルの店舗オペレーションは、ショップ運営事業部と小売業の二つに峻別しており、前者にパルコの運営ノウハウを入れてゆく算段だ。

三点目は、顧客基盤の相互活用。共同販売促進活動やカード顧客の相互活用を進めてゆく。この他、ビルマネジメント、人材派遣など相互に共通する関連事業でも協業機会を探る。また早期にマネジャーレベルで人事交流を行う考えだ。

また再開発が予定される松坂屋の銀座店については「大型SCとオフィスの複合ビルになり、大丸松坂屋はその中の1フロアでやってゆく。周辺で働いている方や近郊や地方から来店する方、将来的には中国を初めとする外国から来る方々。そういった人々のウェイトをどうやって組み合わせて店を作っていくかがポイントで、現状ではプランを2~4通り持っている。来年6~7月に店を閉め、竣工は2017年になるが、開業の2年前ぐらいに(売場の概要を)決める。従来型の百貨店はやらない。百貨店と呼べるかどうかは解らないが、新しい商業ビルを作る。現在の百貨店のビジネスモデルをよりブラッシュアップし、その集大成にする」と意気込む。

現状での消費動向について、奥田会長は「(今期は)意外に順調に来たが、7~8月から全体としては陰りが見え始めている。先行きは、欧州債務危機や中国の与える影響は無視できない。社会保障の問題など先行き不安もあり、慎重に見てゆく必要がある。大切なのは、マーケットの変化にどれだけ対応していくか。新百貨店モデルを研ぎ澄ましてゆけば、計画の売上高と利益は確保できる」と話している。

しかし、消費者の購買動向については「慎重に購入している。ある程度の高単価の商品では衝動買いなどはなく、非常に慎重に、要不要を十分に考えて買う傾向がある」。中でも収益柱である衣料品については「百貨店の衣料品はかなり厳しい。単価の低下を主因として、衣料品・履物への消費支出がかなり落ちてきている。ユニクロやH&Mなどのテナント導入をしているが、衣料の価格に関して、消費者の百貨店への要求は非常に厳しい。消費が二分する中で高額商品はそれなりに売れているが、ボリュームは大きくない。真ん中が抜け落ち、下が拡がっている状態だ。日本の百貨店として、衣料品に大きく期待はできない気がしている」とやや悲観的な見通しを明らかにしている。

(写真は松坂屋名古屋店)

(石川正樹 =東洋経済オンライン)

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