「同一労働同一賃金」なんて本当にできるのか 格差解消の切り札というが課題は山積だ

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日本における労働者の賃金水準はフルタイム100に対し、パートタイム56.8(2013年)とおよそ半分強となっています。同じ基準で見るとフランス89.1(2010年)をはじめヨーロッパ諸国ではおおむね7~8割の水準となっているからです(第1回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」厚生労働省提出資料3)。

また、非正規労働者の位置づけに変化があったのもその要因として見逃せません。かつての非正規労働者は「家計補助型」であったのに対し、平成不況以降は生計を立てる「生計維持型」が急増しました。ますます経済的に貧困な家庭が増えてしまったのです。職務内容も高度化し、正社員の補助から正社員並みの職務を行う非正規労働者も急増したのです。

つまり、両者の仕事内容が接近しながらも、賃金格差は縮まらない状態が続いてきたというワケです。そこに着目し、正社員と非正規労働者の賃金格差を縮める手段として進めているのが「同一労働同一賃金」です。しかし、そうはいっても本当にそんなことが実現できるのでしょうか。

なお、本来は同じ正社員の間でも「同一労働同一賃金」とはいえず、「男女」「年齢」や会社の「規模」「業績」によっても賃金格差はあるのですが、ここでは「正社員と非正規労働者」の間における同一労働同一賃金に絞って解説します。

「職務給」の導入は実現可能か

同一労働同一賃金といって真っ先に思いつくのは「職務給」でしょう。世界的にみてもスタンダードな賃金の決定方法であり、先の検討会でも欧州を参考にしているあたり、日本においても職務給の導入を目指しているように思われます。

職務給の特徴は、同一労働同一賃金であるのですが、その労働の価値の決め方に「職務分析」と「職務評価」を用いていることがあげられます。ここではこれらの詳細説明は割愛しますが、簡単に言うと、その職務(ジョブ)に支払うべき金銭を決定するにあたり、しっかりと分析、評価をして決定するということで、労働協約や経営者による一方的な決定方法ではありません。ましてや単純に市場賃金にあわせて単純に決定するということでもありません。

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