ソフトバンクの焦り 巻き返しへ電撃買収

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電波獲得後にすぐ身売り

買収の本当の狙いは、「テザリング開始ではなく電波オークション対策」と業界関係者は口をそろえる。

スマホの普及で通信量が急激に膨らむ中、携帯電話会社は電波がいくらあっても困ることはないというが、周波数帯の再編で空きが出てきた際にしか獲得できない。これまでは総務省の判断で割り当てられてきた。それが、今年3月に「電波オークション」導入が閣議決定され、変わることになる。いちばん高い価格で入札した事業者が電波を一定期間利用できるようになるのだ。海外では兆円規模の入札額になったケースもあり、ソフトバンクはオークションより金額が見通しやすい企業買収で電波を手に入れたかった、という見方が多い。

一方、イー・アクセスは今年に入ってから身売りのうわさが絶えなかった。同社の千本倖生会長は日本電信電話公社(現NTT)を飛び出し、1984年に現在のKDDIの前身となる「第二電電」の設立に参画。その後、99年にイー・アクセスを創業した業界の革命児だ。同社の直近の2012年3月期の売上高は2047億円、営業利益244億円と業績も好調。ただシェアが約3%しかなく、売り上げや営業利益はほかの3社の10分の1以下。そのため、設備投資がかさむ通信業界での生き残りは簡単ではないとみられていた。

とはいえ、今回のイー・アクセスの身売りについては釈然としない点がある。同社が2月に発表した中期経営計画は、単独での事業拡大を前提としていた。現状イー・モバイルは電波不足にはなっていないが、将来的な契約数の増加に備えて、プラチナバンドである700メガヘルツの割り当てを要望。総務省は6月に唯一プラチナバンドを持たない同社への割り当てを決めた。

 

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