新指導体制で変わる平壌 北朝鮮の今 

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軍事に回すカネを経済へ 「金正日時代から準備」

金正日総書記が昨年12月に急死、今年4月に第1書記(国防委員会第1委員長)となった金正恩氏が政権に就いてから半年。現地指導の様子が労働新聞に掲載されているが、軍部隊の視察以上に、経済関連施設への視察が多いのが目につく。さらに、全国各地の企業所の様子を伝える記事も増えている。

「(北朝鮮は)世界からの軍事的脅威に対する備えはできた。軍事に割くおカネをようやく経済に投入できるようになったから」と、平壌滞在経験が豊富な在日コリアンは指摘する。経済活動のモデルとなる企業や工場での生産活動が紹介され、再開発地区の平壌中心部・倉田通りの住宅建設も進んでいるかのように見える。また、綾羅人民遊園地などレジャー施設も相次いで設置され、多くの市民たちが訪れている。 

 通りや職場の近くには、お昼時になるとサッカーやバレーボールに興じる人たちの姿も見られた。彼らの表情は明るい。前出の在日コリアンは「平壌市民は今、時代が移り変わることを実感しているようだ」と言う。

こんな話を聞いた。1970年代、北朝鮮は「自宅にカギをかける必要がない」ほど、余裕があったという。それが国際情勢の急変と食糧事情の悪化で80、90年代は苦しい時代を経験した。誰もが生きるのに精いっぱいで、つねに緊張を強いられる時代が続き、余裕をなくしていった。

そんな時代がようやく終わりを迎え、「(70年代のような)本来の姿に戻る」とのメッセージが、金正恩第1書記が今年4月15日に行った演説だった。「わが人民が二度と(やせ細って)ベルトを締め上げることなく」「経済強国の建設と人民生活の向上のためにまいた種を立派に育てる」という内容だ。

ただ、新指導者を迎えたから状況が変わったのではないと、この在日コリアンは言う。取材中、政府関係者は「すでに金正日総書記が経済強国に向けた施策を打っていた。それを現在の金正恩第1書記が上手に引き継いでいる」という言い方をした。市内あちこちに見られるスローガンでも「偉業を継いで」という言葉がよく目についた。ということは、国の基本的な運営は当面変わりそうにもないということだ。 

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