あいおいニッセイ同和損保の人事施策

キーマンズインタビュー

【キーマンズ・インタビュー】わずか2年足らずで、3つの人事関連の賞を受賞した人事施策とは?一柳若菜・あいおいニッセイ同和損害保険 人財革新グループ長に聞く。

日本の損保業界は2000年代初頭から合併を繰り返し、現在は3大損保グループが突出した状況になっている。保険料収入で筆頭に立つのが、2010年4月に経営統合により発足したMS&ADインシュアランス グループ。その中核企業が、2010年10月にあいおい損害保険とニッセイ同和損害保険の2社が合併して誕生した、あいおいニッセイ同和損害保険だ。2012年3月期の保険料収入は1兆746億円に達する。

あいおいニッセイ同和損害保険となってからはまだ2年の歴史しかないが、人事関連の賞を立て続けに受賞している。まず新発足して間のない2010年12月に日本能率協会の「2010年度(第23回)能力開発優秀企業賞」本賞、2011年4月に東洋経済の「第4回ダイバーシティ経営大賞女性管理職登用部門賞」を受賞、そして2012年3月にはJ-Winの「2012年(第5回)ダイバーシティ・アワード」敢闘賞を受賞した。

異なる3つの評価機関が、あいおいニッセイ同和損害保険の人事施策を評価したわけだが、3年連続の受賞はかなり珍しい。受賞対象の人事施策を一柳若菜人財革新グループ長に聞いた。

--3年連続で受賞されている人事施策についてお聞きします。合併後間もない2010年12月に日本能率協会の「2010年度(第23回)能力開発優秀企業賞」本賞を受賞されました。日本能率協会のニュースリリースを読むと、「全社員マスタープログラム」と若手社員を支えるOJT体制が評価対象になっています。詳細について教えてください。

弊社の資格体系は、業務3~1級、基幹3~1級、統括3~1級で構成されている。統括級が管理職、基幹級が中堅、業務級が一般社員と考えてもらってもいい。このすべての社員を対象に実施しているのが「全社員マスタープログラム」であり、昇格要件のひとつになっている。

プログラムはeラーニングと全国一斉実力テストで構成されている。eラーニングは、全社員が履修する基本コースと、統括級が対象になる管理コースがある。基本コースは、あいおいニッセイ同和損害保険の社員なら、どの部署にいても知っておかなければならない損保の基礎知識等を履修する。

統括は基本コースに加え、コンプライアンス、品質管理、マネジメントなどの管理コースを履修する。基本コースと管理コースともに、社内の各部署・部門から出題され、毎年改訂されている。

この出題範囲から毎年12月に全国一斉実力テストが行われる。合格するには7割以上の正解が必要だが、合格率は高く、昨年12月に実施した実力テストの合格率は99.9%である。このテストはWeb上ではなく、社員を会場に集めて行っている。

「全社員マスタープログラム」を導入したのは2007年だが、その背景には2006年から社会を騒がせた保険金不払い問題がある。不払い問題が発生した原因のひとつは社員の業務知識が浅かったことだ。そこで全社員を対象にしたプログラムを導入した。当然本社部門の社員も「全社員マスタープログラム」に合格しないと昇格できない。

--若手社員を支えるOJT体制について教えてください。

OJTでは「FT(ファミリートレーニング)体制」を2010年10月に導入した。それまでは1人の先輩社員が入社1~3年目社員をマンツーマンで指導する仕組みであったが、「指導担当者の負担が大きい」「多面的な指導がしにくい」「指導担当者不在の際の指導者がいない」などの問題があった。そこで職場ぐるみ(ファミリー)で若手社員の指導を進めるFT体制を導入した。

具体的には、各職場で所属長がトレーニングリーダー(TL)と複数のトレーナー(TR)を任命し、育成課題ごとに分担して入社1~3年目社員の育成に責任を持つ仕組みだ。TLは職場での次席を担う社員が任命されるケースが多い。

TLが中心となって、育成課題ごとに先輩社員をTRとして割り当てる。TLもTRも自らが担当する育成項目について、1~3年目社員を育成することが業務目標となり、上司との面談を通じてその進捗状況や課題を確認しつつ、計画的な育成を行っていく。進捗状況の確認のタイミングは、6月・10月・2月の年3回だ。

このFT体制を支援するため、人事部はOJT支援システムを提供している。内容は、1~3年目社員への指導項目を共通シートにし、進捗状況を可視化するシステムだ。人事が提供するのは基本の20項目程度だが、部門別シート、職場別シートを付け加えることもできるので、配属先によって項目数は変化する。

OJT支援システムは、OJTの標準化と育成指導項目の可視化を可能にするもので、同期入社者の習得状況の比較などを通じ、各人の育成目標の設定や弱点克服に活用されている。

ちなみにOJTの対象になるのは、社員だけでなく契約社員等も含まれており、現在の対象者は約2000人に及ぶ。

--新入社員研修を長期の合宿で実施されていると聞きました。

社員は全域型と地域型に分かれるが、4月初日の入社式は全域型・地域型の新入社員全員を集めて行う。その後は、全域型と地域型に分けて新入社員研修を実施している。どちらも宿泊研修であり、期間は全域型・地域型にほぼ同じ内容のプログラムを約1カ月間行い、その後引き続き全域型社員には半月弱のプログラムを用意している。

全域型・地域型共通の研修プログラムでは、ビジネスマナーや社会人としての基礎、会社の各部門の役割、および損保業界で働くための最低限のスキルや商品の基礎知識を学ぶ。

全域型のみ研修期間が半月ほど長い理由は、全域型新入社員の配属先が原則全社員損害サービス部門なので、その業務に特化した研修が必要だからだ。

研修期間が地域型1カ月、全域型1カ月半と長く、かつ宿泊研修としているのは、学生から社会人へと意識と行動を変えるためだ。朝は7時15分からラジオ体操を行う。それから朝食を取り、9時から5時まで研修だ。講義の開始時間5分前着席も徹底させている。

その他に宿泊研修にしている理由が3つある。ひとつは同期意識を培ってもらうためだ。過去には宿泊研修ではなかったことがあったが、明らかに同期の絆が宿泊研修と違っていた。

2つ目は、朝と夜の時間の活用だ。新入社員研修で学ぶ損保知識は、はじめて接する者には膨大だ。ホッとするとすぐに忘れてしまう。そこで夜を復習の時間とし、朝に振り返りテストを行って、学びの質を向上させることができる。

3つ目は、新入社員の研修時間以外の姿を見ることができ、素顔を知ることができることだ。

新入社員にとって同期と合宿で時間を共にするのは初めてであり、配属されてからはこれほど長い時間を共有することはない。グループワークでの課題を話し合うために、時間を気にせず自発的に仲間たちで議論する光景が見られるが、それも宿泊研修ならではの長所だろう。

新入社員研修が終わると、新入社員はそれぞれの配属先へ散っていくが、入社半年後と入社2年目にそれぞれ2泊3日程度のフォローアップ研修を行っている。

--2011年4月に東洋経済の「第4回ダイバーシティ経営大賞女性管理職登用部門賞」、そして2012年3月にはJ-Winの「2012年(第5回)ダイバーシティ・アワード」敢闘賞を受賞されています。評価の対象になった女性支援についてお聞かせください。

弊社では2008年に女性活躍推進室を設け、2011年4月にダイバーシティ推進室に改名した。その間に女性管理職養成のためのエントリー研修を設け、キャリアについて考えるための支援ツール「Happy Career+Happy Life」も作成してきた。そのような取り組みが評価され、ふたつの受賞につながった。

ダイバーシティ推進によって目指しているのは、多様な価値観を認めて、組織の柔軟性を強化し、変化に強い会社にすることだ。しかし目標にはまだ遠い。

弊社の社員数は、契約社員を含め1万7549人で、その47%が女性だ。ところが女性管理職数は123人で、3.5%に過ぎない。しかし女性の課長補佐は1361人で42.4%と増えてきた。この課長補佐はいずれ管理職を目指すため女性管理職比率は急増するはずだ。目標とするダイバーシティに近づきたいと考えている。

一柳 若菜
人事部人財革新グループ長。1982年に大東京火災海上保険株式会社(現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)に入社。2004年に沼津支店下田営業所所長(当時、社内初の女性営業所長)、2010年に人事部女性活躍推進室室長、2011年から現職。

(聞き手:HR総合調査研究所(HRプロ)ライター:佃光博=東洋経済HRオンライン)

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