セブン&アイ、井阪新体制に改革の試練 ヨーカ堂再生が試金石に

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しかし、イトーヨーカ堂やそごう・西武など、足元で課題を抱える企業の経営に関与したことはなく、自身も「小型店ではなく、大型店を見たらどのようになるか。自信がない」と周囲に話すなど、手腕は未知数だ。

一方、後藤氏はイトーヨーカ堂で秘書室長を務めた後、ホールディングス設立の05年以降、約10年にわたって中枢の地位にあった人物。関係者は、後藤氏の代表権のある副社長昇格について「井阪氏と後藤氏と二人三脚で経営の指揮をとることになる」と話す。

待ったなしのヨーカ堂改革

ホールディングスの株主で、井阪社長案を支持していた米ファンドのサード・ポイントは、イトーヨーカ堂の縮小・再編やそごう・西武、バーニーズジャパン、ニッセンホールディングスからの投資撤退などを求めている。井阪体制が実現しても、一連の不振事業の改革が遅れ、株価が上がらなければ、サード・ポイントには恩恵がない。井阪氏への期待が厳しい見方に一変する懸念もぬぐえない。

鈴木会長の退任表明のニュースに埋もれた感のある同社の決算発表。2016年2月期のイトーヨーカ堂は上場以来初めての営業赤字となった。17年2月期は10億円の営業黒字転換を計画しているが、市場の見方は厳しい。

「イトーヨーカ堂では、17年2月期に20店舗の閉鎖が予定されているものの、人員削減を伴うリストラは計画されておらず、営業黒字への転換は困難」。みずほ証券アナリストの高橋俊雄氏はリポートでこう指摘する。個人消費の弱さも目立ち始める中、さらに突っ込んだ改革の実施は待ったなしの状況だ。

イトーヨーカ堂は、今回の人事の背後で隠然たる影響力を示した伊藤雅俊名誉会長が自ら育てた同グループの「祖業」と言える存在だ。井阪氏をHD社長とする新たな人事案については「伊藤名誉会長に事前の了承などは取っていない」(指名委員会関係者)というが、「お家騒動」とも揶揄(やゆ)される今回の人事を通じ、創業家の存在が意識されるようになっていることは確かだ。

創業家への配慮と祖業であるイトーヨーカ堂の抜本改革。井阪氏が率いる新体制はすでに大きなジレンマの火種を抱えている。

 

(清水律子 取材協力:浦中大我)

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