東海道新幹線の「トンネル」は、秘話が満載だ 真上に空港の滑走路、弾丸列車計画の名残…

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第2高尾山トンネルを抜け出た新幹線 (写真:human / PIXTA)

第1高尾山トンネルを抜けるとすぐに短い第2高尾山トンネル(175m)に入るが、この二つのトンネルの両側に並行するトンネルを計4本新設し、引き込み線やホームを設けるというのが、県が有力視する「空港直下案」だ。第1高尾山トンネルの出口付近に、駅の中心が設けられることになる。

地図や空中写真を見ていると、なるほど、ここに駅があればどこへ行くにも便利なように思えてくる。しかし、東海道新幹線を運営するJR東海は、一貫して新駅設置を「不可能」と否定している。新駅の候補地は次の掛川駅から約18kmと近く、新駅を設置して「こだま」を停車させれば、加減速する距離が増えて現在の1時間最大14本体制を維持することが難しくなるからだ。

ダイヤ的には「設置不可能」

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牧之原台地は日本有数の茶の産地。明治時代に職を失った大井川の川越人足や元士族らが礎を築いたと言われる

確かに、東海道新幹線の輸送力を落としてまで一地方空港の利便性向上に協力するメリットがあるとは考えにくい。仮に構想が前進するとしても、それはリニア中央新幹線が大阪まで全通し、東海道新幹線の使命が根本的に変わってからのことになるだろう。

大井川を渡って、最初のトンネルが静岡空港の真下。トンネルを抜けたところが「富士山静岡空港駅」。新幹線から空港施設は全く見えないが、そんな想像をしてみるのも楽しい。

新幹線は、牧之原台地を進む。この辺りの茶畑は実にみごとである。次の停車駅は、掛川だ。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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