浦和高校に「分断社会」解消の答えがあった! 誰もが受益者になれる制度設計が必要だ

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深刻化している「分断社会」ついて佐藤優氏と井手英策氏が激論を交わした(撮影:田所千代美)
今の日本社会には、あまりにも多くの分断線が走っている。富める者と貧しい者、都市と農村、男性と女性、高齢者と若者、正規雇用と非正規雇用・・・。分断線を数えあげれば、枚挙にいとまがない。
この「分断社会」にわれわれはどう対峙し、そしてどのように乗り越えればいいのか。『分断社会を終わらせる』の共著者である井手英策慶應義塾大学経済学部教授に、佐藤優氏が迫る。

 

井手:格差の拡大が問題になって久しいわけですが、それがどんな結果を生むかは、まだあまり理解されていないと思うんですよね。

佐藤:そう思います。

井手:たとえば所得格差について言うと、もはや富裕層と貧困層は、相手のことがお互い理解できなくなっていますし、想像することすら難しくなってきています。

まさに社会の分断が深刻化しているわけですが、こうした分断線は、所得階層間だけでなく、都市と農村、男性と女性、高齢者と若者、正規雇用と非正規雇用のように、いまや至るところに走っています。

そうなると、日本国民として価値を共有するのが難しくなってくる。ナショナリズムに訴えて統合を果たそうとする昨今の動きの背景には、こうした事情があると思います。

社会的な分断は深まる一方

佐藤:井手先生が指摘されるとおり、社会的な分断は深まる一方です。かなり絶望的な状況になってきています。

「美しい国」とか「瑞穂の国の資本主義」といった、情緒に訴えるイデオロギー操作をいくら繰り返しても、ほとんど効果はありません。むしろ事態を悪化させています。

さらに言えば、保守を自称する政治家の多くが、「伝統」というものを誤解していて、比較的、近代になって作られたものであることへの学理的な反省がほとんどありません。

民進党にしても大同小異。「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログが話題になり、これを民進党の議員が国会で取り上げましたが、「死ね」というのは、他者の存在を認めない究極の言葉です。排外主義よりもタチが悪い。

そんな言説を持ち上げて、民意と見なす民進党にも、哲学の不在を感じます。なぜ、社会の分断を強化するような言葉をわざわざ使うのか。政治は言葉の芸術ですから、社会を統合できる言葉を使わなくてはなりません。

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