浦和高校に「分断社会」解消の答えがあった! 誰もが受益者になれる制度設計が必要だ

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井手:「誰もが受益者」になれるという制度改革は、政治的にも合理性があるんです。特定の人々を制度的に救済しようとすると、それ以外の人たちが反発し、租税抵抗が生じてしまう。これに対して、富裕層も中間層も低所得者層も、「誰もが受益者」になれる制度設計ができれば、結果として租税抵抗が解消され、税収も増えていく。いま必要なのは、発想の転換。赤字だからできない、じゃない。やらないから赤字なんです。

佐藤:民主党政権時代の子ども手当にしても、民主党(現・民進党)は、もっとそれを誇ってよかった。

井手:そうなんです。当初は所得制限を設けず、中学生以下なら一律、同じ額の手当を支給するという理想的内容でした。民主党政権時代には、高校授業料の無償化、最低所得保障年金、介護・福祉の充実などが実施されたり、議論されたりしましたが、ここに来て、安倍政権の「新3本の矢」以降、その軸足が明らかに成長から分配へと移行し、民主党政権期の議論が一部よみがえりつつあります。

幼稚園や保育園での教育が重要なのは明らか

幼稚園や保育園での教育は、中長期的には日本の経済成長にとってプラスとなる

佐藤:基本的にそれは正しい方向です。われわれにはまだ基礎体力がありますから、あと15年ぐらいは持ちこたえられます。ですから、子どもたちの教育も含めて、今のうちに若い人たちにきちんと分配しておけば、15年後には必ずリターンがあるはずです。

井手:この社会にとって幼稚園や保育園での教育が重要なのは明らかです。すべての子どもが、充実した就学前教育を受けられるようにすること。それが徹底されれば、中長期的には日本の経済成長にとって、つまりは、あらゆる人たちにとってプラスになることが指摘されています。ただ、残念なことに、子育ての終わった世代や、子どものいないカップルがこうした政策に乗り気じゃない。本当はみんなの利益になるのに。また、幼稚園・保育園を教育の場ではなく、単なる一時預かり所のように誤解している親も少なくありません。

僕は、いまの税制や歳出構造をどう具体的に作り変えれば、中間層の政策への共感を育めるのか、正面から考えたいと思っています。

佐藤:それには財務官僚を味方につける必要がありますね。財務省の中に、井手さんの議論に共鳴するような人間がいるかどうかで、かなり違ってくるでしょう。

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