国会TPP審議を止めた「真犯人」は誰なのか 衆院補選を前に与党も止めたかった?

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ゲラを入手した民進党は、7日と8日の同委員会で西川委員長を追及している。同理事会で西川委員長は出版する理由について「これだけ大事な協定なので、後世に残し、引き継いでいく」と弁明したというが、委員会では「委員長は答弁する立場ではない」と説明を一切拒否した。

だが『TPPの真実』はアマゾンでは、「自民党TPP対策委員長として第一線に立った著者がその内幕を明らかにする」との宣伝文も付されていたし、同書にはさまざまな「秘話」も収録されていた。政府は過剰に情報を国民から隠そうとする一方で、かつては交渉担当者でもあった関係委員会の委員長が自分しか知りえない情報を本にして積極的に売るという奇妙な構図が見えている。

珍妙だった石原大臣の答弁

これに珍妙さを加えたのが、石原伸晃TPP担当大臣の答弁だった。

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石原大臣は「何であるか確認できない白い印刷物の束」と発言した

同書の末尾の「むすびに」には、西川委員長から内閣官房と農水省などの関係者に対する謝辞が述べられ、官僚の関与・情報提供を匂わせている。これについて4月1日にTPP対策本部が民進党に提出したペーパーと8日の森山裕農水大臣の答弁は「具体的に執筆に協力した職員は確認できなかった」と言明した。つまり、ゲラが本物の西川委員長の著書であることを否定したわけではない。

にもかかわらず、石原伸晃TPP担当大臣だけが民進党が入手した同書のゲラについて「何であるか確認できない白い印刷物の束」と述べて西川委員長の著書であることを認めなかった。そのうえで「確認できない以上はコメントできない」と言い張ったのだ。

しかしゲラのISBNコードは、アマゾンが予約受付として掲載している西川委員長の著書のISBNコードと一致している。これを内閣不一致だと民進党が抗議したことで、8日に審議が中断。そのまま国会が止まってしまったのだ。

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