国会TPP審議を止めた「真犯人」は誰なのか 衆院補選を前に与党も止めたかった?

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政府与党が当初目論んだ同法案及び関連法案の衆院通過は4月22日だった。というのも、7月に参院選があるために6月1日の会期末を延長することは不可能。その中で憲法第61条による自然成立を考慮するぎりぎりの日程が4月22日だった。

審議日程の厳しさについては、佐藤勉自民党国対委員長も認めるところだ。13日の午前には、今国会での成立見送りを含ませている。

政府がTPP法案の早期成立を望む理由

しかし、政府は諦めてはいないようだ。「(TPP関連法案について)十分に審議していただいた上で、今国会で成立していただきたい」。13日午後の会見で菅義偉官房長官はこう述べ、同法案の早期成立に期待を込めた。

なぜ政府が早期成立を望むのか。それは国内法の整備を終わらせ、アメリカからの再交渉を封じるためだ。4月7日には安倍首相が委員会で(アメリカからの再交渉は)あり得ない話だ。仮に求められても、応じる考えは全くない」と言明した。首相の言葉は守らなければならない。

その一方で、「情報の非開示」の批判をかわすため、1700ページに及ぶ資料を内閣官房TPP政府対策本部のホームページで公開した。だがその内容はすでに開示されたもので、野党が求めるものについてはいまだ黒く塗りつぶされる。

「甘利さんのUR問題と今回のTPP問題は2つの共通点がある。ひとつは情報が非開示になっている点、そしてどちらも甘利さんが出てきて説明しなければならない点だ」

13日午後、衆院第4控室で開かれた「甘利問題・TPP交渉解明チーム」に出席した井坂信彦衆院議員はこう述べている。同チームは「甘利前大臣疑惑追及チーム」と「TPP交渉過程解明チーム」が合体し、より先鋭化して再編されたものだ。

そして、この日に結成されたばかりの同チームがまず追及したのは、冒頭に触れた西川TPP特別委員会委員長に関する問題。5月6日に出版するはずだった著書『TPPの真実――壮大な協定をまとめあげた男たち』(中央公論新社)をめぐるドタバタである。

この「西川TPP問題」の詳細を振り返っておこう。

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