ゼンショーがTOBで赤字スーパーを子会社化 M&Aの狙いは何か

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ゼンショーがTOBで赤字スーパーを子会社化

牛丼「すき家」やファミレス「ココス」を展開するゼンショーホールディングスは10月3日、食品スーパーを展開するマルヤ(東証2部上場)を株式公開買い付け(TOB)で子会社化すると発表した。マルヤの側もゼンショーのTOBに賛同を表明している。

買い付け期間は10月4日~11月1日で、ゼンショーは50%以上の株式取得を目指す。公開買い付け価格は1株につき150円(10月3日終値に対するプレミアムは36.4%)。ゼンショーHDが投じる金額は17.3億円(50%取得時)~34.7億円(100%取得時)になる。TOBへの応募状況にもよるが、ゼンショーHDはマルヤの上場を当面維持する方針という。

今回、TOBにあたっては創業者の新井誠一・最高顧問のほか、親族が取締役社長を務めるアライ興産および西町コーポが賛同(保有株数は3者合計で発行済み株式の37.7%)。2008年1月から22%の株式を保有する筆頭株主の投資ファンド、リサ・パートナーズは東洋経済の取材に対し、「TOBに応募するかどうかは現状では決まっていない」としている。

マルヤは埼玉、千葉県を地盤に約50店を展開する食品スーパー。設立1962年と業界では老舗企業だが、近年は低価格競争についていけず業績は不振。売上高もピーク時だった01年2月期の551億円が、12年2月期は251億円と半分以下に縮小。営業損益も07年2月期から7期連続の赤字が続き、継続前提に疑義注記がついている。

今回、ゼンショーHDはマルヤを子会社化することで、自らが持つマーチャンダイジング(MD=食材の仕入れ、物流、加工、調理、商品開発といった一連の流れ)機能を活用し、食材の共同調達や商品開発での相乗効果に期待する。店舗の再配置などリストラ策については「今後のことは話し合って決める」とマルヤの多賀谷和彦・取締役総務部長は説明する。ゼンショーは07年に青果販売専門の「ユナイテッドベジーズ」を傘下に収めており、小売り事業のM&Aは2例目となる。

市場縮小に歯止めがかからない外食業界では、生き残りをかけMD機能強化や上流への進出でコスト削減を推進する取り組みが進んでいる。10月1日に焼き肉店「牛角」を展開するレックス・ホールディングス(非上場)を子会社化したコロワイド(東証1部上場)も、店舗網を一気に増やし、MD機能を持ち込むことによる相乗効果が、M&Aの最大の狙いだとしている。

ただ、そのレックス・ホールディングスは、かつて買収したスーパー「成城石井」やコンビニ「am/pm」をすべて手放した。外食が小売を買収することのハードルをゼンショーがどう乗り越えるのかが注目される。

(松浦 大 =東洋経済オンライン)

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