スズキが「軽」以外の車種に本腰を入れる理由 「登録車10万台作戦」の勝算はいかに

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アクアのほうが今回の試算では30万円ほど高くなった。ただモード燃費比較ではソリオよりアクアのほうが圧倒的に良いので、個々で損得勘定は判断してもらいたい

ソリオの魅力のひとつは割安な価格設定だ。ハイブリッドコンパクトカーで最も売れている(「2015年度含軽統計新車販売台数ナンバーワン)トヨタの「アクア」と装備内容をほぼ同一にしてネット上で見積もりしてみると、ソリオはアクアよりも30万円程度安い。

燃費性能はアクアが37.0㎞/ℓなのに対し、ソリオは27.8㎞/ℓ(いずれもJC08モード)と開きはある。ただ、このあたりの価格差や燃費性能の差に対する損得勘定は個々の判断で分かれるところではある。アクアほどではないものの燃費性能が良く、しかも背が高くスライドドアを採用したことによる使い勝手の良さなどを総合判断した場合には、ソリオのほうが魅力になってくるユーザーもいるだろう。

ソリオのスマッシュヒットの余勢を駆って、スズキが今年進めているのが登録車ラインナップの拡充だ。2016年に入って「イグニス」「バレーノ」という2つの小型車を新たに投入した。イグニスは排気量1.2Lエンジンを積むコンパクトクロスオーバーと称される独特なスタイルを持ったクルマ。バレーノはインドで生産し、日本に逆輸入する小型ハッチバック車だ。1L(ターボ付き)、1.3Lエンジンの2タイプがある。

特徴的なデザインの「イグニス」

2月18日に正式発売となったイグニスは、立ち上がりの受注状況も好調で、ヒット車の資質も十分備えている

イグニスは、昔の「フロンテ」をも思わせるようなお洒落なデザインを採用。やや高めの地上高と車高が特徴で、ボディサイズは全長3700mm×全幅1660mm×全高1595mmと、機械式駐車場(全高は1550mm以下の制限が多い)への対応はあまり考慮していないものの、全幅を5ナンバーサイズいっぱい(1700mm未満)まで広げていないなど、“ビミョー”なボディサイズがかえって注目されている。

特徴は割安な価格。メーカーオプションの設定を少なくすることなどによって最上級グレードでカーナビや自動ブレーキなどのオプションをほぼ全部選んでも、販売諸経費も含んで200万円を切ることも可能な設定になっている。

さらにはマイルドハイブリッドシステムも搭載されながら、新プラットフォームの採用により、最上級グレードのMZの2WDでも、車両重量は880㎏と軽い。スズキの販売店では「イグニスの搭載エンジンはソリオと同じですが、車体が軽いので走りも期待できます」と説明している。筆者がスズキ販売店で4月上旬に聞いてみたところでは、「ソリオとイグニスが大変好評のため納期が遅れ気味となったので、在庫に余裕のあるスイフトの精算をやめ、両車を増産している」ほどの人気だという。

写真はワールドプレミアの場となった、2015年秋に開催されたフランクフルトショーに展示されているバレーノ

もう1台はバレーノである。2015年に開催されたフランクフルトショーでワールドプレミアされている、全幅が1700㎜を超える3ナンバーのコンパクトハッチバック車だ。インドのマルチ・スズキの工場で製造され、輸入販売されている。新世代の軽量プラットフォームを採用し、1.2L直4エンジンのほかに1L3気筒ターボエンジンをラインナップ。世界市場における最新トレンドが随所に盛り込まれている。

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