松下幸之助は、桃太郎で「役割分担」を説いた 猿とキジと犬がいなければ鬼退治はできない

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たとえば障子である。敷居と鴨居という、障子と違ったものがあるから障子は障子として個性を発揮できるし、敷居も鴨居もそれぞれに個性を発揮して存在できる。そこにひとつの調和が生まれ、まとまりが生まれる。同じように、個性的な人を集めて相補うようにすれば、会社はそれだけ強くなる。

武田信玄は、生涯自国に城というものを築かず「人は石垣、人は城」という考えに徹して、人を重視し、人を最大限に活かして地歩を築いた。人を使うについて、こういうことを言っている。

「自分は部下に釣り合いということを考えている。たとえば馬場信房は寡言で気位が高い。だから、よくしゃべり物事をてきぱきとやる内藤昌信と組ませる。山県昌景は性急で、敵を見ると自分の軍勢だけでも攻めかかるようなところがある。そこで、高坂昌信のように、まずじっくり考えてから行動する者と一緒に働かせる。強情な者には柔和な者を組ませれば、水と火とが物を煮るようにうまくいくものだ」

組み合わせが重要

つまり、人を使うにあたっては人の組み合わせが大事だというわけである。

そのとき勘違いしてはならないのは、個性的な人を集め存分に働いてもらうことが大事ならば、全体としての方針というものはどうなるのか、ということである。方針があったら個性を発揮できない、だから方針などいらないと思う人がいるかもしれない。しかし、実際にはそれも反対である。

「個性というものは、もともとひとつの、まあ、いわば拘束というものがないと発揮できんのや。非常に矛盾したことを言うようやけど、個性は拘束なくしてありえないんやね。障子と敷居鴨居の話でいえば、障子が障子でありうるのは、敷居と鴨居という拘束があるからや。障子が自由に開け閉めできるのは、上と下で挟まれておるからや。個性というのも同じことや。

大工さんの道具箱でもそうやね。大工道具というひとつの方向があって、そのうえで道具はさまざまである。カンナもあればトンカチもある。ノコギリもあればノミもあるというようにね。それぞれに個性を主張しとるわね」

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