北海道新幹線「低乗車率」には3つ誤解がある 「満席」には決してできない本当の事情

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JR東日本の東京駅新幹線ホームは2面4線で、すでに飽和に近い(写真: tomotomo / PIXTA)

更に言えば、東京駅におけるJR東日本の新幹線駅は2面4線しかなく、折り返しの容量が拡大できない。そもそもは1面2線しかなかったのを、中央線快速の駅を高架に上げて駅の全体を丸の内側に寄せたことで、やっと「2面4線」にしているという事情もある。

その結果として、大宮以南の区間に関しては「4分間隔」のスロットしか設定できていない。実は、北陸新幹線の予想以上の成功により、この「4分間隔スロット」は繁忙期の臨時列車のスジを含めると、飽和に近い状況がある。

だから、例えばの話になるが、2030年度に予定されている札幌延伸が成功して、東京から北海道までの乗客のシェアの相当部分が航空から新幹線に移ってくるというような場合には、「大宮以南」はパンクしてしまうかもしれない。

その場合に関しては、旧国鉄時代の構想としては、新宿駅の「丸の内線より深く京王新線より浅い地下空間」を使うことになっていたのだが、現在の経済状況では困難が伴うだろう。

連休と初夏の乗車率アップに期待

したがって、JR東日本としては、恐らくは田端駅付近に新幹線ターミナルを建設して「京浜東北、山手、湘南新宿ライン(新駅)、上野東京ライン(同じく新駅、少し距離があるが)」などとの乗換駅とするか、あるいは「フリーゲージトレイン(軌間可変電車)」を使って、大宮か、この田端のあたりで「たにがわ」「あさま」「なすの」などの短距離新幹線は在来線に降ろすなど、東京の飽和を解消する措置を考えないといけなくなる。

そんなわけで、北海道新幹線については、現時点では乗車率100%にはできない事情がある。勿論、向上させていかなくてはならないが、まずは連休と初夏の需要掘り起こしを待つことにしたいと思う。現時点での「乗車率低迷報道」は、やや一方的ではないだろうか。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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