切れる福田首相、プッツンの小沢代表、両氏にブーイングの嵐も

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切れる福田首相、プッツンの小沢代表、両氏にブーイングの嵐も

塩田潮

 4月9日の党首討論を見て、国民新党の亀井静香代表代行は「首相は喧嘩を売ってきた」と評した。

 パフォーマンス嫌いで奇策や大業はなし、根回しも裏工作も苦手、手堅さと用心深さと気配りが取り柄の福田首相が、初めて公の席で敵の大将に喧嘩を売るという行動に出た。支持率30%割れで危機感を抱き、人気浮揚を狙って、なりふり構わず「闘う首相」へイメージチェンジを図ったのか。実際は計算ずくの変身作戦ではなく、怒ると熱くなるタイプという一面もあるらしい福田首相だから、辛抱が限界に達して「切れた」のかもしれない。そういえば、小沢民主党代表も昨秋、一度、「プッツン」したことがあった。
 いずれにしろ、首相は喧嘩を売った。小沢代表も受けて立った。これで過去半年の「右手で殴り合い、左手で握手」という奇妙な関係はおしまい、この先は完全対決モードだ。

 首相は再議決で突っ走り、野党は首相問責決議案で対抗する。何も決まらない、何も動かない政治が続く。福田首相の胸算用は、国会閉幕後、たとえば外交のような、野党の承認も自民党の合意も不要の分野で点数を稼いで生き延びる。虎の子の「衆議院3分の2」は手放せないから、来秋の任期満了ぎりぎりまで解散はしない。
 一方の小沢代表は対決路線のままで今秋の代表選を乗り切り、総選挙決戦に臨む戦法だろう。だが、「切れる福田首相」と「プッツンの小沢代表」のどちらかが途中で投げ出す可能性もある。

 ここはすぐに民意を問う場面だが、永田町劇場では不人気の両主役の力比べ、我慢比べが続きそうだ。とはいえ、国民は筋書きのない迷走芝居を愛想尽かしせずに観劇し続けるとは限らない。政治を動かすための知恵比べ、技比べも演じて見せなければ、観客席はブーイングの渦となるだろう。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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