森トラストの次期社長・伊達美和子氏の素顔 森ビルとも協業、株式上場にも柔軟姿勢か

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まもなく着工する、虎ノ門パストラルホテル跡地再開発では、伊達氏が陣頭指揮を執った。隣接する虎ノ門ヒルズ周辺エリアを整備する森ビルとも、都市計画ですでに協力が実現している。「娘の実績はもう十分」と、森社長も太鼓判を押す。

ビル99棟や、ホテル、法人会員制リゾート施設「ラフォーレ倶楽部」で計7200室を展開する、森トラストの総資産は、およそ1兆円。2015年3月期の売上高は2728億円で、「六本木ヒルズ」などを展開する森ビルとともに、“港区の大家”とも称される。森ビルは2011年、創業家以外から辻慎吾氏を社長に据えたが、森トラストは同族経営を継続する方針だ。

2人の兄は森トラストを去った

森社長は当初、3人の子女を後継者と考えて、それぞれに会社を分割して承継する腹積もりだったという。一つの会社に兄妹を置かず、分割承継するというのは、先代からの考え方。「同格でトップが2人というのは無理なんですよ」(森社長)。森ビル創業者の父・泰吉郎氏が亡くなった際も、兄の稔氏が森ビルを、弟の章氏が森トラストを承継することが、あらかじめ決まっていたという。

が、伊達氏の2人の兄は、すでに森トラストを去った。「長男は早く独立して社長をやりたいというのでのれん分けした。二男は競争が煩わしかったようだ」(森社長)。

今後、会長として補佐するのは、「次期社長が財務、人事などの総務系業務に慣れるまで」と森社長は話す。これまで森社長がこだわってきた非上場という点についても、「上場するかもしれませんね。それは娘の考える話」(森社長)と、伊達氏の方針を尊重するスタンス。新社長への権限移譲は一気に進みそうだ。

「週刊東洋経済」2016年4月16日号<11日発売>「核心リポート05」を転載)

茨木 裕 東洋経済 記者

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いばらき ゆたか / Yutaka Ibaraki

1975年生まれ。「週刊東洋経済」編集部所属

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