住友化学の好業績、ニワトリが支えていた! 世界で脚光浴びる「メチオニン」とは?

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そうした追い風に乗り、同社のメチオニン事業は前2016年3月期に過去最高の収益を記録。事業売上高は600億円規模と前の期から2ケタ伸び、売上高営業利益率で3割超、金額にして200億円前後の営業利益を稼ぎ出した模様だ。

プロピレンなどを化学合成して生産される石油由来のメチオニン。需要は年率6%以上の伸びが続く

プロピレンやメタノールなどを化学合成して作るメチオニンは化学メーカーの事業領域だが、今のところは世界を見渡してもプレーヤーの数は限られる。

世界シェアの4割超を握る独エボニックを筆頭に、米ノーバス、中国藍星集団、そして住友化学と、4社で総需要のほとんどを担う。

設備投資負担が大きいうえ、製造過程で硫化水素などの危険物を取り扱うほか、排水・廃液の処理に手間が掛かる点などが参入障壁になっている。

ちなみに、世界2位のノーバスは米国企業だが、株主は三井物産と日本曹達。1991年に2社が共同で米国のバイオ化学大手、モンサント社から事業を買収した経緯があり、三井物産が全株式の65%、日本曹達が35%を保有する。そのノーバス社も業績は絶好調で、前2016年3月期に同社は過去最高となる300億円前後の純利益を稼ぎ、日系2社の連結業績に大きく貢献した。

年率6%超の成長、能力倍増投資を検討

メチオニンが注目を集めるのは、足元の稼ぎっぷりに加え、今後も市場の成長が続くことが確実視されているからだ。新興国の生活水準が上がって食肉需要は年々増えているが、宗教的な制約が少ない鶏肉は特に消費量の伸び率が高い。国連食糧農業機関の統計によると、鳥肉(七面鳥など鶏以外も含む)の生産量は今後10年間で2割以上増え、現在もっとも生産量の多い豚肉を数年内に抜く見通しだ。

当然、鶏の飼育頭数が増えれば、その餌に使用されるメチオニンの需要も増えていく。魚粉からの切り換えもさらに進む見込みで、住友化学によると、石油由来のメチオニンの需要は年率6%以上の長期的な成長が予想されるという。

旺盛な需要を受け、愛媛にある同社のメチオニン工場は超がつく繁忙状態にある。「中国の飼料メーカーを中心に引き合いが非常に強い。文字通りのフル操業を続けているが、それでも生産が追い付かない状況」(西本専務執行役員)だ。このため、緊急対策として既存設備を改良・変更し、今2016年内に生産能力を14万トンから1割以上引き上げる。

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