被災者に寄り添って1年半、看護師ボランティアの活動が長続きする理由

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かかりつけ医が月に2回、訪問看護が週に2回来てくれることになったため、「今は安心して自宅での介護を続けることができる」とたい子さんは話す。村上さんの紹介でボランティアの理学療法士が来てくれるようになったのをきっかけに、信さんはベッドサイドでのつかまり立ちもできるまで体の機能が回復した。
 
 ただ、避難所生活が長かったうえに訪問看護やリハビリはまだ始まってから日が浅いこともあり、「定期的に来て相談に乗ってくれるキャンナスの看護師さんは本当にありがたい」とたい子さんは話す。

9月14日には、キャンナスの被災地支援活動にかかわったメンバーによる「同窓会」(活動報告会)が東京都内で開かれた。石巻で統括リーダーを務めた菅原健介さん(理学療法士)は約150人の参加者を前に、「避難所では組織の指示ではなく、支援が必要だと思う人に向けて一人一人が自分の判断で活動してきた」とキャンナスの活動の特徴を語った。

自らも被災者で、石巻市立渡波小学校避難所のリーダーとしてキャンナスによる支援を受け入れた山田葉子さんは現在、キャンナス東北・石巻事務所のコーディネーター長を務める。菅原健介さんからの要請がきっかけで、山田さんはキャンナスの活動に加わった。同じく被災者として渡波小の体育館で避難所の運営を切り盛りしてきた高橋誠さんも現在、石巻事務所でキャンナスの活動に従事している。

「高台への住宅の移転など新たな生活上の課題が持ち上がる中で、精神面でのフォローが必要な人が新たに出てくる」と山田さんは仮設住宅の今後を予想する。「支援が必要な人がいる限り、息長く活動を続けていきたい」とも山田さんは語る。

一人一人のメンバーの“思い”を大切にしてきたことが、キャンナスの活動が長続きする主因なのだと、筆者は認識を新たにした。


都内で開かれたキャンナスの「同窓会」



小野寺信さんの体調をチェックする山本恵子看護師


仮設住宅集会所での打ち合わせ

(岡田広行 =東洋経済オンライン)

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