電子マネー戦争に新展開 ナナコ商店街進出のワケ

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電子マネー戦争に新展開 ナナコ商店街進出のワケ

東京都信用金庫協会に、東京下町のある商店会から相談が寄せられたのは昨年初めだった。

「電子マネーを導入したいがうまくいかない。どうしたらいいのか」

量販店や駅構内の商店、いわゆる駅ナカなどでは、プリペイド型電子マネーのネットワークが拡大の一途にある。にもかかわらず、近隣の伝統的な商店街は蚊帳の外に置かれがちだ。電話の内容は、そんな悩みを訴えるものだった。

信用金庫にとって商店街は重要な顧客基盤だ。その商店街の地盤沈下が危惧されるようになって久しい。地元商店街活性化の必要性に思いを巡らせていた矢先の出来事だった。

導入したくてもできない 商店街を阻んでいた壁

あれから約1年--。信用金庫とセブン&アイ・ホールディングスの提携による、商店街での電子マネーの本格的な導入が東京都内で初めて実現する。

ここ数年、電子マネーの普及は進んだ。先行したEdy(エディ)に続き、JR東日本のSuica(スイカ)や関東の私鉄などによるPASMO(パスモ)、小売業ではセブン&アイグループのnanaco(ナナコ)、それに追随するイオンクレジットグループのWAON(ワオン)と、電子マネーの種類も増えた。主要カードの合計会員数は今年1月末で7000万人超。利用加盟店数も拡大を続けている。

ところが商店街では、電子マネーを導入したくても、導入コストの高さや運営主体による顧客囲い込み志向がネックになっていた。前者はコスト倒れの懸念、後者は「軒先貸して母屋を取られる」ことへの恐怖感からだ。実際、電子マネービジネスでは、顧客囲い込みをうたい文句にしている運営主体も存在する。

その点、セブン&アイグループの戦略思考には、顧客囲い込みの発想はない。そもそも同グループは、「地域社会との共存共栄のために、小売りの現場で利便性を提供する」(氏家忠彦・同ホールディングス取締役専務執行役員)のが基本的発想だ。ナナコも小口決済上の顧客利便性向上や、釣り銭管理など業務コスト軽減によるレジ効率化の手段と位置づけている。その効果を高めるには、ナナコ自体の普及が必要だ。

その意味では、ナナコが商店街と結びつく素地はあった。しかし、それだけではない。

「商店街のお客さんは、エプロン姿のまま自転車で来るような主婦たち。定期券を使って電車で通ってくるわけではない」(信金関係者)。そうした客層は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの来店客と一致する。つまり浸透が期待できる素地があった。

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