曇りでも人気!「日本一の星空ツアー」の秘密 長野県の小さな村が起こした奇跡

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たとえば初陣となった2012年4月、阿智村の小学生を対象に行ったモニターツアー。それまで事前に阿智村の麓で本を見ながら星空を見上げ、「あれがシリウス。あれがオリオン座」と指さして憶えたスターガイドたちは、実際に山頂に登って驚いた。無数にある満天の星空で、どれがシリウスでどれがオリオン座なのか、見当もつかない。このときは持っている知識を総動員してなんとか乗り切ったという。

初めて雨が降り、星が見えない日のこと。スターガイドたちは事前に「もし雨が降ったら、室内にお客さんを案内し、プロジェクターで星を見せよう」と決めていた。写真のコマ送りで「今日は星が見えませんが、見えたらこんなに綺麗です」と見せて説明するというのは、スターガイドたちが自ら考えたアイデアだ。

しかし、初めてのことで彼らも緊張していた。プロが撮影した写真はなく、自分たちで撮影した写真を見せるという手作り感満点の演出だった。「お客様の反応や、反応を見ながらどう対応を変えるかなどを気にする余裕はまったくなかった」と彼らは振り返る。

こうした星が見えない日の対応では、肝心の星が見えないだけに、お客さんを盛り上げるための話術も必要になる。「話すのは得意ではない」というスターガイドも多かったが、毎日やっていると次第に慣れてきてコツも掴めるようになる。1年目の最後には、映像を使って盛り上げられるようになったという。

そこで学んだこともあった。曇りや雨の日は、参加するお客さんも「今日は星が見えないかもしれない。でも天気が悪いのは仕方がない」と諦めモードだったりする。そういうお客さんに対して「諦めずに行きましょう」と盛り上げ、結局星が見えなくても、「また来て下さい」と繰り返すことが大切だ、ということだ。

一生懸命やっていることはお客さんに伝わる

たとえ天気が悪くても、スタッフが一生懸命やっていることはお客さんに伝わる。そして「曇っていたけどすごく楽しめた」と言ってもらえることがあったのだ。その気づきは、スターガイドたちの大きなやりがいにもなっていったという。

星が見える天気のいい日でも、試行錯誤を繰り返した。真っ暗な中で「あの星を見てください」と言っても、その星がどこにあるかはなかなか伝わらない。たとえば北極星。当初は、わかりやすい北斗七星の形を見つけてもらい、ひしゃくの空いた口から5倍の距離、というオーソドックスな口頭での説明だけで北極星を見つけてもらおうとした。

しかし少人数であれば、この方法でも参加者の反応を見ながら進められるが、参加者が100人を超えるとそうはいかない。そこで大出力のレーザーポインターを海外から輸入し、星を指し示すようにした。その思いつきのアイデアが成功するかわからなかったそうだが、実際に使ってみると、大出力のレーザーポインター自体の物珍しさもあって、ますます盛り上がるようになったという。

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