ワーキングプアを自治体が作っている 『非正規公務員』の著者に聞く

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──いつも雇用不安が付きまとうわけですね。

非正規職員となって20年間以上、勤めている人たちも多い。一定の分野の公共サービスを担ってきた。それがいつも来年に仕事があるのかわからない状態にさらされている。非正規には退職金も出ない。

──司法はどう判断しているのですか。

公務員法上の限界はあるが、それでもできることを司法は行政に求めようとする。たとえば民間には有期雇用を無期雇用に転換するという解雇権濫用に対する類推適用がある。公務員は労働契約ではなく、任用だという法解釈を前提としながらも、民間の解雇権濫用の類推適用にあまりに近い状態であれば、損害賠償を求めてよいという判断だ。雇い止めに対して任用1年間分の報酬を払えと、実質上1年任期を更新したのと同じ状態を求めた判例が出ている。

──条例でも対応できるとも。

ほぼ100%できる。地方自治法は常勤職員に給料と手当を払い、非常勤職員には報酬と費用弁償を払うとだけある。逆にいえば、条例で明記すれば手当も支給できる。

──任期については。

本人から申し出がないかぎり雇い止めできない仕組みを法律上入れておく必要がある。同時に新しい公務員の類型を作る。スペシャリストや異動限定の公務員としての採用枠があっていい。むしろそのほうが充実した公共サービスが提供できよう。

かんばやし・ようじ
1960年東京都生まれ。国学院大学大学院経済学研究科博士課程前期修了。全日本自治団体労働組合中央本部職員を経て、2007年より現職。著書に『ポスト・アパルトヘイト』(共著)、『公契約を考える 自治総研ブックレット』(共編著)、『虚構の政治力と民意 自治総研ブックレット』(編著)。

(聞き手:塚田紀史 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2012年9月22日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

『非正規公務員』 日本評論社 1995円 299ページ

 


  

 

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