欧州鉄道、8割引もある「超割引運賃」の裏側 予約変更やキャンセルは一切できないが…

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欧州の鉄道パス。日本国内で購入すると、価格は高くてもトラブル時の返金などで安心感がある

それならばインターネットの鉄道会社サイトで買った方が得ではないか、と考えるのは早計である。現地の鉄道会社サイトは、母国語もしくは英語しかなく、もちろん日本語はない。どういう種類の乗車券で、どういった制約があるのか、などといった情報が書かれていても、それをきちんと読解できる語学力が必要だ。

また、乗車券の種類によっては郵送でしか対応していないこともあるが、欧州域内であればいざ知らず、日本へ郵送となると時間も掛かるし、郵送事故の心配もある。日付が近くなると、こうした乗車券を買うにはリスクを伴うことがある。不測の事態が発生し、返金の手続きをする場合も、現地で自分の手で行なわなければならないが、これがかなり厄介だ。

不測の事態を考えると・・・

以前、イタリアのピサからフィレンツェ経由でミラノへ移動した際、フィレンツェまでのローカル線が沿線火災で運転見合わせとなり、長時間不通となった。ようやくフィレンツェに到着したときには、乗り継ぐ予定のフレッチャロッサ(イタリア鉄道の高速列車)は出発し、それどころかミラノ行き最終列車も既に発車した後だった。

唯一、その当日に移動する手段は、別会社のイタロ(民間の高速列車でイタリア鉄道の乗車券は通用せず、新たに乗車券が必要)に乗車するしかない状況だった。発車時間が迫っていたので、選択の余地なく飛び乗ったが、翌日ミラノ中央駅で、乗れなかったフレッチャロッサの乗車券を返金しようとしたものの、結局返金されなかった。

理由は、フィレンツェ近郊で発生したことは、ミラノは管轄外であり、例え乗り遅れようが駅で夜を明かそうが、この一件はフィレンツェの駅員に聞くべき話であって、同じイタリア鉄道であっても、ミラノでは一切返金には応じないの一点張り、まったく取り合ってもらえなかった。

日本で購入した乗車券であれば、こうした事故が発生した場合、帰国後に返金される場合がほとんどで、もちろん現地窓口で難しい現地語で問答するなど、無駄な時間を費やす必要はない。日本で購入する乗車券が高いのはそれ相応の理由があるからで、安いからというだけで飛びつくのではなく、(約款を読み解く力や現地での交渉力など)自分のスタイルに見合った最適な方法で購入することをお勧めしたい。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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