原料スクラップ価格下落でも東京製鉄の10月契約価格は全品据え置き、国内建設向けに好転の兆し

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原料スクラップ価格下落でも東京製鉄の10月契約価格は全品据え置き、国内建設向けに好転の兆し

国内電炉最大手の東京製鉄は9月18日、10月の契約価格を発表した。前月から原料のスクラップ価格が下落するなか、全品種で価格を据え置いた。アジア市況は底入れの状況でも輸出の環境は厳しいが、国内の住宅、倉庫向けで好転する動きが見られるという。

東京製鉄の10月の契約価格は、9月契約価格を据え置いた。主要品種のH形鋼でトン当たり6万8000円、ホットコイル(薄板)で5万7000円、厚板で6万2000円。前月にH形鋼で3000円、薄板や厚板は2000円値上げしており、7月契約で出した「底値」価格を引き続き上回った。前回発表から、原料のスクラップ価格はトン3000円あまり下落しており、製品価格を据え置いたことでマージンは改善することになりそうだ。

なお、9月の鋼材の生産見通しは22万トンで、H形鋼が6万4000トン、ホットコイルなど薄板が11万5000トン(うち田原工場の生産分は5万5000トン)で、輸出分はゼロ。厚板2万2000トン。19万トンだった前月から大きく増えた。

会見した東京製鉄の今村清志常務は、「東北の震災復興需要は来年にずれ込むが、店舗、工場、物流倉庫、マンションなど中小案件が相当数出ている」と前年比での件数増も指摘した。中国の粗鋼生産が8月は5800万トンへと前月までの6000万トン台から減産。中国政府による1兆元の景気刺激策も明らかになり、ようやく底入れが確実になった。こうしたことも勘案し、価格の据え置きを決めたようだ。

アジア市況が底入れしたとはいえ、輸出の環境は依然厳しく、足もとで提示されている価格は、ホットコイルで560~580ドル、H形鋼で720~730ドルで、円高もあり、依然として新規成約は困難な状況という。足元では、消費税導入前の駆け込み需要が出始めている個人住宅、マンション。ネット販売の増加に関連した新型の物流倉庫、さらに東北などで水産加工場の案件などが引き続き高水準という。10月以降も、需要をにらみながら生産量の拡大を狙っているようだ。

(写真は愛知県にある東京製鉄の田原工場)

(山内 哲夫 =東洋経済オンライン)

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