日銀、次回金融政策会合で追加緩和議論へ 27-28日開催、デフレ圧力の再燃を懸念

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 4月5日、日銀は27─28日に開く金融政策決定会合で、追加金融緩和について議論する公算が大きくなってきた。複数の関係筋が明らかにした。写真は日銀、3月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 5日 ロイター] - 日銀は27─28日に開く金融政策決定会合で、追加金融緩和について議論する公算が大きくなってきた。複数の関係筋が明らかにした。

1月に追加緩和に踏み切ったばかりだが、世界経済の不透明な状況が続く中、企業や家計の物価観が低迷し、円高・株安基調も継続。2017年度前半としている物価目標2%の到達がさらに後ずれするリスクが高まっているためだ。

同時に設備投資や雇用は堅調に推移し、1月の追加緩和の効果がこれから実体経済に出てくると期待できるため、日銀はギリギリまで情勢を見極め、政策維持の選択肢も含め詰めの判断を下すとみられる。

日銀は1月29日、金融機関から預かる資金の一部に0.1%のマイナス金利を付与する政策を初めて導入する決断を下した。日銀内には、この効果を見極める必要があるとの声が少なくない。

だが、その中で追加緩和の議論が再浮上している背景には、1)急激な円高と賃上げの上昇鈍化で物価見通しの下方修正が避けられない、2)企業や家計の物価観を示す期待インフレ率の指標が軒並み悪化している──などの現象が目立ってきたことがある。

また、新興国経済の減速などで、足元の生産活動も低迷。需給ギャップの改善も後ずれ傾向が目立ってきた。

日銀が重視する「物価の基調」の構成要素である需給ギャップと期待インフレ率の鈍さを背景に、2017年度前半としていた物価2%の到達時期は、さらに遅れることが避けられない情勢になりつつある。

ドル/円<JPY=EBS>は1月会合の直後に121円台まで円安方向に動いたが、現在は110円台と10円程度円高に振れている。また、2016年度春闘のベースアップは前年比0.4%程度と15年度の0.6%を下回った。

このため機械的に試算すると、16年度、17年度の物価見通しは1月時点よりも0.3─0.4ポイント下振れる。

さらに日銀が1日公表した3月短観では、大企業製造業の業況判断が前回の昨年12月と比べて6ポイントの大幅悪化となった。4日に公表した企業の消費者物価見通しも、1、3、5年後いずれも昨年12月から0.2ポイント低下した。日銀や内閣府の集計する家計の物価見通しも下振れている。

もっとも、海外経済の不透明感や年明け以降の市場変動を受けた短観などに見られるさえない経済指標は、ある程度想定済みで、日銀内にはこうしたリスクに事前に対応して1月追加緩和に踏み切ったとの判断がある

さらにマイナス金利政策が、時間とともに効果を表し、大幅な金利低下が企業の借り入れ拡大を通じて景気・物価を押し上げるとの波及ルートを想定している。その点に関連し、短観では企業の設備投資計画や雇用情勢について、底堅い状況が確認された。

物価面では、生鮮食品とエネルギーの影響を除いた消費者物価指数(日銀版コアコアCPI)が、2月に前年比1.1%と1%前後で安定して推移している。

今後プラス幅が縮小を続けるのか現時点では判断が難しく、海外経済の減速の程度と国内景気の先行きをどう見るかが、判断を左右することになりそうだ。

仮に追加緩和に踏み切る場合は、マイナス金利幅拡大よりも、資産買い入れを中心とした手段が議論となる公算が大きいとみられている。

ただ、黒田東彦総裁は5日の衆院財務金融委で、追加策で量・質・金利をどうするかは総合判断であり、事前に決めるのは難しいと述べており、追加緩和の最終的な決断とその手段に関しては、今後、本格的な議論が進むと予想される。

*見出しを修正し、カテゴリーを追加して再送します。

 

(竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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