意外と知らない、真田丸に見る「大河の裏側」 「チーム論」そして「ネット戦略」

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――第二のご当地! それは初めて聞きました。もっと具体的に聞かせて下さい。

4月10日の放送回から、主人公の真田信繁が豊臣家の人質となり、舞台が大阪に移ります。そうすると、ゲーム界で真田幸村(信繁)と1位2位を争う人気武将の石田三成が登場し始めます。石田三成は滋賀県北近江の出身なので、石田三成で地域おこしを考えていた滋賀県とは、いち早く積極的な交流を始めています。「真田丸」では、石田三成を山本耕史さんが演じるのですが、山本さんと一緒に、石田三成415回忌法要にも参列させていただきました。

画期的な滋賀県の動き

――滋賀県で石田三成といえば、最近、滋賀県のPR動画が話題でしたね。「武将と言えば三成~、イチ・ゴー・ロク・ゼロ、滋賀県生まれ~」というヘタウマな歌とレトロな映像が印象に残る動画でした。

それは、滋賀県が「真田丸」という大河ドラマを“いい意味で”追い風にすべく考えた施策のひとつです。さっきお話しした、ゲームを入り口として歴史に興味を持った若者を、さらに石田三成に馴染ませるための、ゆる~い動画として非常に話題になりましたよね。

地方自治体に大河の話をすると、たいてい「うちの町は、どれくらいロケしてもらえますか?」「うちの地域はドラマのシーンとして出てきますか?」など、大河ドラマの放送でどんなメリットを与えてくれますかといった、他力本願な質問をされることが多くあります。でも滋賀県は違いました。今から、大河ドラマが終わった後のことを考えて、とても積極的に動かれています。というのも、2011年に「江 ~姫たちの戦国~」で、大河ドラマのご当地になった経験があるからです。

――「江」は、その名の通り、滋賀県北近江の戦国大名、浅井長政の三女・お江が主人公でしたね。

そうです。あの年、滋賀県にはそれなりに多くの観光客が押し寄せました。でも、次の年に別の大河ドラマが始まるとブームは山を過ぎて、下火になっていく。そのうち閑古鳥とまではいかなくても、「あれ?終わったからかな」ってなるわけです。そんな大河ドラマゆかりの地として当事者経験をしているので、今回滋賀県は「真田丸」イヤーに、“いい意味でこの風を利用しよう”とアプローチをくださったわけです。

――「真田丸」の放送時に、直接関連づけた観光サービスだけを行おうとすると、年末に最終回放送が終わった後、観光客の来県が下火になってしまいます。でも、放送時に追い風を利用して「石田三成」そのものの知名度を上げ、ブランディングしていけば、大河が終わった後も、滋賀県の観光資源として、石田三成というコンテンツは生き残るというわけですね。

そうです。今、朝の連続テレビ小説も、町おこしに一役買っていると言われています。でも朝ドラは、実在の人を題材にしつつも、どこかフィクションです。フィクションを扱っているということは、ドラマの放送がなくなると、消えるということでもあります。

もちろん大河もフィクションですが、扱っているのは歴史のコンテンツです。これは大河があろうがなかろうが消えません。それを一年かけて、NHKが勝手に宣伝しているわけですから活用しない手はない。それで地方が元気になってくれれば、公共放送として、さらに地域に密着し、皆様に愛される放送を手掛けられる。一石二鳥どころか、こんなに幸せなムーブメントはありません。そのためにも、一過性ではなく、さらに大河ファンを生むような実のあるものにしてほしいですね。

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