セミナーレポート

医薬品、医療機器メーカーが挑むオペレーション改革の今

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特別講演Ⅰ
「アストラゼネカの中・長期成長計画に連動したサプライチェーンの変革」

アストラゼネカ
執行役員 オペレーション本部長
松丸央也

 「アストラゼネカは『サイエンスの限界に挑み、患者さんの人生を変えるような医薬品をお届けする』というミッションを掲げている。このミッションを達成するためには、サイエンスのリーダーシップの追求、成長の加速、働き甲斐のある職場づくりという3つが、戦略的な優先課題である」。

 松丸氏はまずそう述べた後、同社の研究開発費が「年間約56億ドルで、医薬品メーカーとしてはトップクラスにある」ことなどを紹介した。そのうえで同社の成長戦略がオペレーションに与える影響について、「開発パイプラインがプライマリーケア領域中心から、がん領域中心へと変化していくのに伴い、オペレーションもパラダイムシフトする必要がある」ことに言及した。

 現在日本では「ロジスティックの強化として米原工場の拡張を進めている。その柱は、生産プロセスの可視性向上、変動・ばらつきコントロール、市場の変化への迅速な対応だ」とした。また「医薬品のサプライチェーンで最も重要なことは、欠品なき安定供給に尽きる」として、グローバルな全生産計画をシステムでつなぎ、供給計画をすべて可視化するというコンセプトで改革を推進していることを明かした。

 これら変革を担う人材開発・育成については、柔軟なキャリアパスなどがあることに触れ、「グローバルで共通のプラットフォームがある」と指摘。「新卒の社員をグローバルで活躍できるようにするユニークなプログラムもあり、日本で海外の人材を採用し、海外に送り込むこともある」と語った。そして松丸氏はもう一度、同社のミッションについて触れ、「これを実現していくために努力し続けていく」と結んだ。

ショートプレゼンテーション
「野村不動産のメディカル物流センターへの取り組み」

野村不動産
都市開発事業本部 物流施設事業部
稲葉英毅

 「ランドポート」の名称で高機能型物流センターの開発に取り組んでいる野村不動産は、「今後は物流空間の提供だけでなく、プラスアルファの価値も提供していくことを重視している。とくに今は特定の業種を想定した物流施設の開発に力を入れており、メディカル物流施設の開発の検討も開始している」。

 そう語った稲葉氏は、通常の物流施設と比較して、ワイドスパンのグリッド採用などランドポートのいくつかの特徴に触れ、柏での事例を紹介しながら、物流の効率化を実現していることを強調した。

 そのうえで、メディカル物流施設の開発に取り組む背景として、「ジェネリック医薬品の普及やネット販売の拡大などにより、医薬品業界に構造変化が起きていて、変化に対応するためには物流の改革が必要だ」と指摘。「2017年6月に竣工予定の『ランドポート高槻』はメディカル業種を想定しており、人員の確保もしやすい立地にあり、BCP対策なども充実している」と説明。「物流施設を取り巻く企業をコーディネートして、新しい価値を提案していきたい」と述べた。

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