JAL“予想外”の成功で注目、稲盛氏の右腕 森田JAL特別顧問が明かすアメーバ経営の実際

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京セラ式病院原価管理手法では、一般の診療科単位での収支管理ではなく、診療報酬に基づいて、コメディカルの各部門でも収支管理をする。通常であれば、コメディカル部門は医師の指示された業務を行うため、自身の採算に対しての関心が薄く、経営に関与している意識もあまりない。

だがコメディカルごとに収支を明らかにしていくと非効率な部分が明確になり、業務の改善を進めることができる。

医師の指示の仕方が非効率の原因のこともある。ただ業務の中で、コメディカル側から医師に意見するのは難しい。しかし、経営会議の場で各部門の業績を議論する過程で、そのことが明らかになるため、医師と相談しながら問題を解決していく流れが生まれる。やがて医師も積極的に協力しようということになる。

たとえば薬剤部門の業績が悪い原因が、在庫の廃棄にあった。それは同じような効能のクスリを数多くそろえていたためだった。同じ効能でも医師によって処方するものが異なるため多くの在庫を持たねばならず、結果的にロスにつながっていた。これが経営会議で明らかになり、医師の間で話し合うことで、処方するクスリの種類を減らすことができた。

うれしいことに現在コンサルをしている病院はすべて黒字を維持している。医療費の効率化はこれからの日本にとって非常に重要な課題でもある。コンサルを通じて多少なりともお役に立てればと思っている。

アメーバ経営はさまざまな分野に適用できるが、関心があるのは市町村の経営だ。自治体には、いわゆる行政サービス部門と、水道や交通などの事業部門がある。事業部門は一般企業と同様なので、サービス部門の効率化のお役に立てないかと思う。

行政は予算の作成は厳格だが決算のチェックは甘い。行政はいったん作った予算を消化することに専念し、効率よく使うという意識が薄く、収支結果を問われることもない。自治体財政が厳しい中、部門別採算管理で効率的な行政サービスにつなげられるかもしれない。

もりた・なおゆき●1967年京都セラミック(現京セラ)に入社、87年取締役、89年常務、95年専務、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)社長、2006年京セラ副会長、KCCSマネジメントコンサルティング(KCMC)社長、08年KCCS会長、09年京セラ副会長退任。10年日本航空インターナショナル(現日本航空)稲盛会長補佐、10年日本航空副社長、11年KCMC会長、12年日本航空特別顧問、KCCS相談役。

タイトル横写真:2010年4月のJAL新入社員入社式 撮影:尾形文繁

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