「汚い爆弾」に、日本はどう対峙するべきか 核物質を使用したテロの恐怖とは?

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テロによる脅威は、「核を使用する攻撃」と「原発など核施設に対する攻撃」に大別できる。前者は核がテロ攻撃の手段となる場合であり、後者は核がテロ攻撃の対象となる場合だ。

最も恐れられているのは核兵器を使ったテロ攻撃である。もっとも、核兵器はかなり重く、軍で保有されている通常のタイプのものは数百キロもあるので、常識的にはテロリストが運ぶのは困難だ。また、核兵器の管理はどの保有国でも厳重にしているので、核兵器を使用したテロ攻撃はまだ現実の問題になっていない。

しかし、核兵器は小型化しており、今や、人が運べる重量のものまで開発されている。米軍が保有している「デイビー・クロケット」と称される核兵器の弾頭は30キロ以下である。核兵器の小型化の危険性は核拡散防止条約(NPT)の場でも指摘されている。

一方、核兵器ではないが、放射性の物質(核物質)を使用した攻撃の危険性は現実の問題になりつつある。と言うのは、このタイプの攻撃は現実にはまだ成功していないが、未遂の事件は起こっているからだ。

核爆発を起こすのではないので、その威力は核兵器とは比較にならないくらい小さいが、人を長期にわたって苦しめる放射線をまき散らすので、「汚い爆弾」と呼ばれている。

危険な核物質は世界中にある

このように危険な核物質は、世界に大量に存在しており、また、その管理には問題がある。さまざまな原因があるが、核物質が警備の薄い弱い研究施設、医療施設などに保管されているのも一つの問題だ。

ソ連邦が解体するに際して使用されなくなった兵器から取り外された核物質が大量に流出し、国際的な闇市場に出回ったこともある。

国際原子力機関(IAEA)には核物質の不正な取引に関するデータベースがあり、それによると、核物質の不法所持と窃取または紛失などを含め1年に100件くらいの事故が起こっている。しかも、これは国際機関が把握している事例だけのデータであり、報告されていないこともかなりあると言われている。

核物質をテロ攻撃の危険から防ぐためにどのような対策が講じられているか。

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