社会を作る楽しさを人々は忘れかけている--『社会を変えるには』を書いた小熊英二氏(慶応義塾大学総合政策学部教授)に聞く

社会を作る楽しさを人々は忘れかけている--『社会を変えるには』を書いた小熊英二氏(慶応義塾大学総合政策学部教授)に聞く

今、多くの人が「自分はないがしろにされている」と思っているという。そういう社会を変えるには、どうすべきか。社会運動の新しい可能性を考える。

──「社会を変えるには」とは思い切ったタイトルですね。

何を変えたら「社会を変える」ことになるのか、から問い返した。首相を替える、支配政党を替える、ビジネスモデルを変える、などいろいろ考えられても、いま一つ決定的な感じがしない。それは、万人が共通して「これが社会を代表する」と考えているものがないからだ。

たとえば「王が社会を代表する」という通念がある社会では、王を替えることが「社会を変えること」になる。マルクス主義なら、生産関係が社会を代表すると考えるから、王など替えても無意味で、生産関係を変えなければ社会は変わらない。

今は多様化が進んで、万人が納得する「社会を代表するもの」が成立しにくい。ビジネスでも、「これが今年の流行」といったものはなくなっている。そこで、そういう状況そのものを変えることを考えてみた。

──そのキーワードが、「ポスト工業化」と「再帰性」ですか。

どちらも不安定化と多様化を考察した社会科学的な概念だ。情報化とグローバル化が進むポスト工業化社会では、大量生産と安定雇用を特徴とした工業化社会と違って、「支配的なトレンド」や「常識的なライフコース」といったものが成立しない。すべてが多様な選択の一つになり、すべてが自由で不安定になる。

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