ものづくりからの復活 円高・震災に現場は負けない 藤本隆宏著 ~良い現場を日本に残すためにどうすべきか

ものづくりからの復活 円高・震災に現場は負けない 藤本隆宏著 ~良い現場を日本に残すためにどうすべきか

評者 中沢孝夫 福井県立大学地域経済研究所所長

 これほど時宜を得た本があるだろうか。震災前と震災後の日本について、ものづくりの現場、サプライチェーン、電力、中小企業、農業、そして貿易交渉やサービス業のあり方といった幅広いテーマを対象とし、そのすべてを通底させ、説得的に問題の所在と解決方法を明らかにしている。キーフレーズは「良い現場を日本に残そう」である。

「現場」とは、「企業にあって直接的に付加価値を生む場、それを通じて雇用を生む場」のことである。その現場が「生産性や品質の向上を達成することで」競争力を高めることが、日本がグローバル競争で生き残る条件の一つであると主張する。

1ドル360円から80円に至った円高の中で、なお製造業がグローバルな場でプレイヤーとして存在できるのは、持続的な競争力の強化(著者の言葉で「能力構築競争」)がゆえである。

リーマンショックから大震災の後にかけて、日本にあふれたのは悲観論だった。たとえば数社のエレクトロニクス系メーカーの経営の失敗を「日本の製造業の敗北」のように見立てて、サービス中心の産業構造への転換の主張があとをたたない。しかし、「製造業とサービス業を白黒で分ける単純な二分法は、産業競争力の分析においても、もはや時代遅れ」である。セブン‐イレブンや宅配便が「現場」をかぎりなく進化させている現状を見れば、「顧客に向かっての流れの良さ」という意味で、製造業と同質である。流行のソリューションビジネスとは「製造業とサービス業の融合」なのだ。

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